人生をスマートに、そして健康的に過ごす選択肢のひとつとして知っておきたいピルの基本知識を産婦人科医・丸田佳奈先生が解説!
どれくらいの人がピルを飲んでいる?
80人の女性にピルに関するアンケートを実施したところ、これまでに服用したことがある人が36%、服用経験のない人が64%という結果に。飲んだことがない人からは「副作用が怖い」「何のために飲むのかわからない」など、疑問&不安が大噴出! リスクや副作用もあるけれど、正しく理解して活用すれば、生理とうまく付き合う手助けになったり、必要に応じて妊娠のタイミングをコントロールしてくれたりする 便利な薬。ひとつの選択肢として知っておきたい知識を、次ページから産婦人科医・丸田佳奈先生が詳しく解説! 2人のガールのピルの体験談も参考にしてみて。
ピルを飲むと体にどんな変化が起こるの?
「通常、卵巣からはエストロゲンとプロゲステロンという二種類の女性ホルモンがでていますが、低用量ピルにはそれらの働きに代わる薬が含まれています。低用量ピルを毎日飲むと体の外からホルモンが入ってくるため、卵巣はお休み状態となり、ホルモンの分泌も排卵も止まります。これによって生理が軽くなったり避妊を行うことができます」(丸田先生)
避妊以外にはどんなメリットがあるの?
「低用量ピルを飲むと排卵が止まるので避妊効果があります。また、生理の量が減り、生理が軽くなり、生理痛も楽になります。毎月生理を起こすタイプの低用量ピルでは、生理不順も改善されます。生理前の腹痛・腰痛、肌荒れ、イライラなどの精神的不安定といったPMSを改善させる効果もあります。他にも、病院では、医師の判断で病気の治療や症状緩和、予防で用いることもあります」(丸田先生)
よく聞く“用量”の意味や、使い分けは?
「ピルの用量には、中用量と低用量があり、その違いは薬に含まれているホルモンの量です。中用量ピルは低用量ピルよりもホルモン量が多く含まれており、副作用のリスクが高くなります。現在では、日常生活での避妊や生理トラブル、病気の治療に対しては低用量ピルを使い、緊急避妊薬(アフターピル)や月経移動に使用する場合は中用量ピルを使うのが一般的です」(丸田先生)
副作用があると聞いて怖い! 具体的にはどんなことが起こる可能性があるの?
「低用量ピルの一般的な副作用として、吐き気、頭痛、胸のはり、むくみ、不正出血などがありますが、ほとんどの場合これらの症状は継続して飲んでいるうちに無くなります。なかなか改善しない場合には別の低用量ピルに変更することで解消することもあります。
注意すべき重大な副作用としては、血栓症があります。低用量ピルを飲んでいないときに比べ、血管の中で血液の塊(血栓)ができやすくなり、この塊が肺などの血管を詰まらせてしまう可能性があります。発症の確率は1年間で1万人に6〜9人と少なく、喫煙者、肥満の人、年齢が高い人でより起こりやすいと言われます。
また、低用量ピルを飲んでいる人では乳がんのリスクもあがる可能性があると言われています。これらのデメリットもあるので、低用量ピルの使用にあたっては医師の説明を受け、相談の上、心配な症状があればすぐに医師に相談しましょう」(丸田先生)
太るというのは本当?
「低用量ピルに体を太りやすくする効果はありません。しかし、低用量ピルを飲むと、一部の人に副作用としてむくみが出ることがあり、体が水分をため込むことで数値上体重が増えます。また、食欲が増したように感じるという人も少数います。こういった症状は薬を飲み続けることで無くなることがほとんどなので、いつも通りの生活を続けていれば問題ありません 」(丸田先生)
コストはどれくらいかかる?
「月経困難症などの病気の治療として低用量ピルを処方する場合は保険適用になります。避妊など、病気の治療以外の目的で低用量ピルを処方する場合には原則保険適用外です。コストは施設によって多少の差はありますが、保険適用でも保険適用外でも、どちらも自己負担分は1シート(約1か月分)だいたい¥2,000~3,000台です」(丸田先生)
飲み忘れてしまったときはどうすればいい?
「飲み忘れに気づいたときは、すぐに飲み忘れていた分の1錠を服用し、当日の1錠もいつもの時間に服用してください。2日以上服用し忘れた場合は、気づいた時点で前日分の1錠を服用し、当日の1錠をいつもの時間に服用し、その後は当初のスケジュールどおりに服用を続けてください。なお、飲み忘れがあった場合は、避妊効果が下がったり、不正出血が起きたりするので注意が必要です」(丸田先生)
ピルを飲むのをやめれば、もとどおり生理が来て妊娠できるの?
「低用量ピルは内服を中止すると3カヶ月以内に排卵が起こり、通常の自分の生理が戻ります。また、その後の妊娠率は低用量ピルを使用していない場合と同じです」(丸田先生)
オンラインでのピル処方も増えていますが、注意すべき点は?
「オンラインで低用量ピルを手に入れる場合は、『病院のオンライン診療を受けて医師に処方してもらう』という流れになります。初診時もしくは定期的に、必要に応じて医師に対面での受診や検査を案内されることもあるので、その際は必ず指示に従いましょう。オンライン診療での処方は、処方のたびに自分の担当医がいて、その先生から処方してもらうため安心です。
一方、医師の診療の無い通信販売でピルを手に入れる方法では、全く異なるので注意が必要です。誰がどこから売っているのかもわかりませんし、送られてきた低用量ピルが本物なのかもわかりません。錠剤が破損していた、錠剤が揃っていなかったなどのケースも報告されています」(丸田先生)
【ピル体験談 1】ダイエットが原因の生理不順が3ヵ月で改善
Humika /ELLEgirl UNIon
Age:24
飲み始めたきっかけ:
大学1年生のとき生理不順になったのがきっかけ。食事制限(炭水化物抜き)と運動を組み合わせたダイエットで6kgほど痩せたのですが、それから生理が来なくなりました。3カ月や、ときには6カ月空く時があり心配になって近くの産婦人科へ。
医師からは「体重を増やしながら、ピルで生理を起こしましょう」と言われました。まだ痩せたい気持ちがあり、副作用で体重が増えると聞いていたピルの服用には抵抗がありましたが、3カヶ月飲み続けました。
ピルを飲んで改善したこと:
生理が定期的にくるようになりました! 今はピルを飲んでいませんが、毎月しっかり生理がきます。多少のPMS(生理前症候群)はあるものの、生理痛は全くありません。
ピルを飲んで困ったこと:
身体のむくみ、体重の微増
From Humika:
同世代の女性にはどうか無理なダイエットをしないでほしいと思います。代謝が下がって痩せにくくににくもなってしまいました。そんな私も今は和食を中心にバランスよく食べて、健康を維持しています。私のウェブメディアでも自分の経験などを書いているので参考にしてください♡
ORIENTAL MEDIA https://oriental7773.themedia.jp/
※個人の感想であり、効果には個人差があります。
【ピル体験談 2】ピルの処方で病気が発覚! 治療のために服用中
YURI/ELLEfgirl UNIon,大学院生
Age:26
飲み始めたきっかけ:
月経困難症・子宮内膜症の治療目的で。ずっと生理が辛かったけれど、「辛さ」は測ることができないので、みんな私と同じぐらいなのだろうから婦人科に行くほどではないと思っていました。
ところが、国家試験と生理が被らないよう生理日移動のピルを処方してもらうために婦人科を受診したところ「子宮内膜症」という病気が発覚。具体的な治療法はないものの、ピルを飲むことで悪化を防ぐことができるということで服用を始めました。
ピルを飲んで改善したこと:
毎回の生理がとても辛くて、生理痛で動けず冷や汗をかくほどでしたが、とても楽になりました!
ピルを飲んで困ったこと:
うっかり飲み忘れた翌日に、痛みなしに不正出血してしまい服を汚してしまったことがあります。最近は飲み忘れがないようLINEやアプリで通知を入れています。
From Yuri:
今後は海外でもムーブメントとなっていた #endometriosisawareness (子宮内膜症啓発) のキャンペーンなどを日本でも広め、少しでも多くの女の子・女性に婦人科へ通院することの重要性や、生理は本来辛いものではないことを伝えていきたい!
Yuri's Instagram: https://www.instagram.com/yuri__style/
※個人の感想であり、効果には個人差があります。
丸田 佳奈先生/KANA MARUTA
日本大学医学部医学学科卒業、産婦人科医・タレント。現役産婦人科医でありながら、テレビやラジオなどへも多数出演し、正しい医療情報をわかりやすく多くの人に発信している。近著に『キレイの秘訣は女性ホルモン: 女医・丸田佳奈が答える47の悩み相談』(小学館)など。
ブログ https://ameblo.jp/maruta-kana/
インスタグラム https://www.instagram.com/kanamaruta/