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少しずつ変化が!ドイツのセクシュアルウェルネス最新事情

世界的にも「セクシュアルウェルネス」への関心が高まっている昨今。国によって違いはあるものの、市民が声を上げてアクションを起こしたり、新たな制度が誕生したり、と社会全体で議論され始めています。

11の国と地域に住むエディターやスタッフに「性」についてのアンケートを取り、オンラインインタビューを重ねて現地の状況をリサーチ。

第三回目は、『コスモポリタン』のドイツ版編集長を務めるララ・ゴンシュロウスキーさんにインタビュー。2022年のジェンダーギャップ指数は10位で、ジェンダー平等に積極的に取り組んでいるドイツ。ララさんに聞いた、現地の「セクシュアルウェルネス(身体的、感情的、精神的、社会的にも健康な状態)」の今をレポートします。

ララ・ゴンシュロウスキーさん

ニューヨークとモスクワでのキャリア、PRコンサルタント、ファッションやライフスタイル誌でのエディター、副編集長などを経て、2019年より『コスモポリタン』ドイツ版の編集長に。

――ドイツでは、「セクシュアルウェルネス」と聞いてどんなイメージがありますか?

ドイツではセクシュアルウェルネスに関して、オープンな“ふり”をしている人が多いような気がします。

深夜のテレビ番組では、恋愛バラエティもありますし、以前はヌードの人たちが出ている内容もありました。独『コスモポリタン』でも「セックス」についての企画は必ず大見出しで出てきます。

でも、ドイツ人の半分はパートナーとしかセックスについて話さないという研究を見つけました。女性の方が友人と話す傾向はありますが、男性はそこまで話さないようで、私の夫もそうだと思います。文化的に保守的な考えの人が多いこともあり、知らない人とセクシュアルウェルネスの話をするのは好きではないのかなと思います。

――学校での性教育では、どんな授業が行われていますか?

私が学生だった頃は10歳〜11歳ぐらいのときに体の仕組みをメインに教わり、徐々に避妊の方法を教わりました。女子校に通っていたのですが、生物の時間にバナナを使ってコンドームの使い方を教わったのを覚えています。

近年ドイツではカトリック教会で多くの子どもたちが聖職者たちから性的虐待を受けていたことが明らかになり、社会問題となりました。こういった背景もあり、母親の80%は性教育は学校教育の一部であるべきだと感じていて、60%は自分でも性教育を行っており、75%は性被害から子どもを守るためにも早くに行うことが大切だと考えているというデータもあります。子どものいる友人に聞いたのですが、ここ数年は性教育も変わってきているようで、学校では「多様な性」についての教育も行われているようです。

私自身の経験で言うと、セックスについて両親と話したことはないですね。15〜16歳のときに、恋人ができてピルを飲みたいから産婦人科医に行きたいと言ったくらい。夫とのセックスについても両親には話しませんが、姉とは、同じような悩みがあるときに話します。

――若い世代がセクシュアルウェルネスに関する悩みでクリニックに行くのは一般的とのことですが、どんな悩みが多いですか?

リサーチをしたところ、今はセクシュアリティの悩みがほとんどのようです。自分の性的指向や性自認に困惑したときに、誰に話せばいいかわからないというのもあると思います。ただクリニックはほとんど都心にあるので、郊外に住んでいたらなかなか行きにくいかもしれません。

どこの国もそうだと思いますが、LGBTQ+コミュニティも郊外では都心ほど受け入れられていない傾向にあります。

――「生理」に対してはどんなイメージがありますか?

生理は、『コスモポリタン』でもメインのトピックです。近年、かなり変化してきていると思います。ただ、母や姉妹とは気軽に話しますが、まだ職場では堂々と話すようなトピックではないですね。「生理中の女性は感情的」というステレオタイプも残っています。

ドイツでは贅沢品19%と日用品7%の2種類の消費税があります。以前、生理用品はメイク用品などと同様に贅沢品の19%の税がかかっていました。『コスモポリタン』でもこれには問題意識を持ち、いくつもの記事で政府にプレッシャーをかけました。この議論が社会的に起こったことも、近年生理が大きなトピックになった理由の一つだと思います。

――「生理」についてよく話題になるトピックはありますか?

ドイツでは生理休暇はないのですが、医師の診断書なしに理由を言わずに病気休暇を取ることが可能です。私自身は、上司によっては生理休暇があっても取りにくいと思いますし、生理で休むのを特別視せず普通のこととするためにも、あえて生理休暇をつくる必要はないかなと思っています。この問題にはドイツのセレブや生理用品の会社も関わっていて、かなり議論になっていますね。

商品としては、ソフトタンポンが話題です。ドイツで使われている生理用品のほとんどはタンポンですが、一般的なタンポンには紐がついていて、トイレに行くたびに紐をチェックしないといけないですよね。タンポンが取り出せなくなってしまうことに不安を覚えた経験がある人も多いと思います。

nevernot」というブランドのソフトタンポンは、スポンジのような見た目で紐がありません。この形状のタンポンは、プロのアスリートやセックスワーカーも使っています。私も使ってみたところ、初めは難しいのですが慣れるとこちらの方が快適に感じました。

消費税の議論以降から、生理をより快適に過ごすためのマーケットは広がってきていると思います。

――「更年期」に対してはどんなイメージがありますか?

まだタブートピックという感じで、私たち自身ももっと学ぶ必要があると思います。私も、母親がホットフラッシュで大変そうだったのを見て初めて知りましたし、まだ考えたくないと感じてしまう部分もあります。友達とも話したことはないです。

――「コスモポリタン」の編集長として、セクシュアルウェルネスで注目していることはありますか?

女性の性欲、女性の体の仕組みなど、女性のセクシュアルウェルネスについて話されるようになったのが、以前と変わってきているなと思います。セックスのトピックも以前は「いいセックスをする方法」だったのが、今は「女性として何をしてほしいか」「なぜ性欲の波があるのか」などです。

女性自身が自分の体をもっと知ろうとしている姿勢がここ2年ぐらいで変わってきていますね。

――国としてLGBTQ+コミュニティに対してどういった姿勢ですか?

ベルリン、ミュンヘンなどの大きな都市では受け入れられていますし、大きなLGBTQ+コミュニティがあります。

ただ、1989年まで分断されていた東ドイツの地域では、違いを受け入れることにオープンではない傾向にあり、同性婚に反対の人も多くいます。ここ10年で多くの人に支持されている政党は、ジェンダー教育を止めようともしています。

以前『コスモポリタン』で、東ドイツの地域に住んでいるゲイの男性が精子をレズビアンのカップルに提供し、父親としてカップルと関わっているという記事を書きました。彼らはとても協力的でしたが、攻撃や批判を恐れ、記事上では名前や住む場所は公開したくないと話していました。彼らの住んでいる都市はベルリンから2時間程度の距離でしたし、その現実を知って悲しかったですね。

――男女間の賃金格差が社会課題になっているとのことですが、その背景にはどんなことがあると思いますか?

ドイツはまだまだ男女平等とは言えません。2022年1月から第2次 女性の指導的地位法(FüPoG II)という法律が施行されました。ドイツは女性のリーダーをサポートするために政治的プレッシャーをかけていますが、悲しいのが未だにこういった法律が必要だということ。

そしてもっと大きな問題だと個人的に思うのは、女性の方が低賃金の仕事についていること。ドイツでは医師やエンジニアなどの職業は、男性名詞が一般的に使われています。こういった言葉や、ロールモデルがいないことも背景にあると思います。男性の育児休暇取得率もまだまだ低いですし、難しい問題ですよね。

このトピックは『コスモポリタン』のDNAでもあるので、未だに全然変わっていないことにイライラすることもあります。ただ、今女の子を妊娠しているので、将来娘のためにもこういった問題がない社会にしようというモチベーションも感じています。

※2015年に成立したFüPoGでは、2016年1月から大手企業108社の「監査役会」の女性役員比率を30%以上とすることが義務付けられた。FüPoG IIは、監査役会より強い決定権を持つ「取締役会」に導入するもの。

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