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海外の「セクシュアルウェルネス」事情は?ジェンダー平等先進国・台湾の今

世界的にも「セクシュアルウェルネス」への関心が高まっている昨今。国によって違いはあるものの、市民が声を上げてアクションを起こしたり、新たな制度が誕生したり、と社会全体で議論され始めています。

今回は、11の国と地域に住むエディターやスタッフに「性」についてのアンケートを取り、オンラインインタビューを重ねて現地の状況をリサーチ。

第一回目は、ハースト台湾でデジタル・プロダクト・スーパーバイザーとして働くルル・チェンさんに取材。アジアで初めて同性婚を合法化し、ジェンダー平等においても世界トップクラスの台湾の「セクシュアルウェルネス(身体的、感情的、精神的、社会的にも健康な状態)」の今をレポートします。

ルル・チェンさん

ハースト台湾のデジタル・プロダクト・スーパーバイザー。3年間イギリスでマーケティングと広告について学び、デジタルメディア業界には2年前から勤務。猫1匹と暮らし、趣味はワイン。

――台湾では「セクシュアルウェルネス」と聞いてどんなイメージがありますか?

ここ最近では、社会全体がセクシュアルウェルネスについてもオープンな姿勢になってきていると思います。以前までは「恥ずかしいもの」「話しにくい」というイメージが残っていましたが、私たちの世代では“健全”に話せるようになりましたね。

まだ難しいトピックだと感じている人もいますが、ターニングポイントに差し掛かっていると個人的には実感しています。

――違う世代の人と「セクシュアルウェルネス」について話す機会はありますか?

オープンに話し合えるような家族や学校、バックグラウンドを持つ人の間では、話題になることもあるとは思いますが、違う世代の人と話す機会はほとんどないですね。

私自身は「最近パートナーとセックスしてないんだけど、何か問題あるかな?」と母に相談することもありますが、それは特殊な環境かなと思います。

――セクシュアルウェルネスに関する知識を得たり、悩みを解決したりするときはどうしていますか?

今はインターネットからの情報がほとんどです。すぐに何でも検索できるとはいえ、やはり10代への性教育は足りていないですね。一部では、幼少期からの性教育に対して「余計な手出しをして、わざわざ問題にしなくていい」という考えを持つ人がいるのが現状です。

とは言っても、親とセクシャリティを含めた、セクシュアルウェルネスについて話す機会は以前よりは増えてきてはいると思います。特に同性婚については、話題に上がることも多いですね。

――ご自身は学校でどんな性教育を受けましたか?

私は保守的なカトリックの女子校に通っていたので、毎年学期初めに神に処女を誓う“バージンカード”にサインをしていました。学校の授業の一環で、女の子の中絶体験を描いた動画を見たこともよく覚えています。

友達からは、ピルやコンドームの使い方などを学ぶ公立の学校もあると聞いたこともあります。

――「生理」に対してはどんなイメージがありますか?

私自身は“普通”のことだととらえていますが、残念ながら一部では、生理=感情的というステレオタイプなイメージも残っています。

あと「生理休暇」が制度としてありますが、実際に使えるかは会社の雰囲気にもよりますね。

ただ、台湾では生理中の人に対して理解のある人が多い気がします。パートナーに生理だと伝えると水や温かいスープ、チョコレートなどを買ってくれたり、いつも以上に優しくしてくれたり、生理用品を買ってきてくれたり、お腹をマッサージしてくれたりすることもあります。「生理のときは、甘いものや温かいものがいい」というイメージが強いみたいですね。

――「生理」についてよく話題になるトピックはありますか?

「生理用品の無償化」についての声は上がっていますが、大きな動きにはまだ至っていないのが現状です。

生理前の肌荒れや生理痛、生理不順の対策としては、漢方がメイン。私はピルを使用していますが、妹や友達が生理不順で悩んでいたときには漢方を処方してもらっていました。

ピルは、パートナーに頼らず“自分の身体を守るため”の避妊の手段として利用者が増えてきている印象です。

――生理用品はどんなものが主流ですか?

ナプキンが主流ではありますが、タンポンを使う人も多いです。あとはサステナビリティへの意識から、何度も洗って使える布ナプキンなどを使っている人もいますね。

台湾では香り付きのナプキンがたくさんあって、夏にぴったりなミントの香り、リフレッシュできるフローラルやハーブの香りなど種類は様々。他にも、睡眠時に経血が漏れないようなパンツ型の夜用ナプキンもあり、どれもコンビニで気軽に買えます。

以前まで、お店で生理用品を購入すると中身が見えないように紙袋に入れて渡されることが多かったのですが、今では選択制になりました。「生理用品は必要なもので、恥ずかしいものではない」という見方が広がったのが理由です。

▲台湾ブランド「愛康」のナプキン。メンソール仕様のものが人気。

――「更年期」に対してはどんなイメージがありますか?

社会的に、更年期=感情的でヒステリックとイメージがあるように感じますし、年齢差別もいまだに存在しています。

私の母や会社の先輩は、更年期特有の症状を薬などでコントロールしていますし、向き合う手段は増えていると聞きます。多分、今はまだ社会が追い付いていない段階なのだと思います。

――台湾のメディアやSNSでは「性」に関してどんな発信が多いですか?

メディアでここ数年もっとも話題になっているのは、「多様な性」について。台湾では2000年に起きた「葉永鋕(イエ・ヨンヂー)事件(女性らしい振る舞いが原因で、当時中学3年生だった葉永鋕がいじめを受け、学校のトイレで転倒して頭を強打し、翌日未明に亡くなった事件)」がきっかけとなり、学校でも「多様な性」に関する教育が取り入れられるようになりました。

実際には学校や先生によって差はあるものの、環境は変わっていると思うし、私たちの世代が今後を担っていくなかで大きく変わることを願っています。

――同性婚が認められている台湾ですが、社会全体として「多様な性」に対してどう向き合っていると思いますか?

街を歩いていても、LGBTQ+カップルをよく見かけます。ただ私が中心都市の台北に住んでいるからそう感じるのであって、郊外は違う状況かもしれません。

ゲイを公表している友人に聞いてみたら、「ここまで来られたことに対して満足はしているものの、国際結婚への課題が残っている」と言っていました。日本出身のパートナーを持つカップルは多くいるものの、同性婚が台湾でしか認められていないため、婚姻届が受理されないという事例もあるんです。

別のオープンリーゲイ(ゲイであることを公表している)の友人は、小学校や中学校でいじめられた経験はあるけれど、常に助けてくれる人がいてくれて周りには恵まれたと話してくれました。ただ家族へのカミングアウトが難しく、今では受け入れてくれたものの、初めは母親に理解してもらえなかったそうです。

台湾のなかでジェンダーダイバーシティへの注目度は上がっている一方、知識がなく、無意識のうちに誰かを傷つけてしまっている人もいます。一人ひとりがしっかりと学んで、社会全体として前に進んでいくことが必要だと思いますね。

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