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Women's Health

不妊の4割は男性に原因がある? 男性不妊症の完全ガイド

※本記事は2023年6月26日にWomen's Healthで掲載されました。

不妊の原因を調べるのは女性の責任と思われてきたけれど、実際、不妊の4割は男性側に問題がある。この記事では、男性不妊症の主な原因と、少しでも妊娠率を上げるための方法を見ていこう。

男性不妊症とは

一般的に不妊とは、避妊なしのセックスを1年以上続けても妊娠に至らないことをいう。

原発性不妊症:一度も妊娠しない場合。
続発性不妊症:過去に妊娠・出産を経験しているが、それ以降の妊娠がない場合。

原発性不妊症は非常に多く、初めての妊娠を試みるカップルの7組に1組(15%)が経験する。

男性不妊症は、不妊に悩むカップルの約40%に見られる。

また、男性だけが不妊症のケースは全体の15%、双方が不妊症のケースは全体の約25%を占めている。

男性不妊症の原因

男性不妊症の原因として考えられるのは:
・精管閉塞(精子の通り道が詰まっている)
・精巣のケガや病気
・精索静脈瘤
・精子障害
・染色体異常
・性機能障害
・ホルモンの問題
・生殖能力を低下させる基礎疾患
・生殖能力を低下させる薬
・環境有害物質や放射能

精管閉塞

精子の通り道が詰まってしまう原因は多いけれど、もっとも一般的なのは:
・鼠径部の手術(鼠径ヘルニアの修復術や停留精巣の固定施術を含む)
・精巣を包む陰嚢の損傷(スポーツによる軽いケガを含む)
・感染症(特にクラミジア、淋病、結核)
・精管切除/パイプカット(精子の通り道をカットする避妊法)

男性の中には、生まれつき片側あるいは両側の精管が欠損している人もいる(先天性精管欠損症)。精管は精巣で作られた精子を尿道まで運ぶ管。この管を通る過程で精子は、前立腺の裏にある精嚢から来る分泌液と混ざって精液になる。

精管閉塞で不妊の男性の約10%は先天性精管欠損症。精嚢の欠損も多く見られる。

ヤング症候群も稀に精管の閉塞を引き起こすことがある。ヤング症候群では、慢性気道疾患(気管支拡張症)と慢性副鼻腔炎に閉塞性無精子症が伴う。

精巣のケガや病気

スポーツやケンカの最中に受けた衝撃で精巣が腫れたり、精巣および精巣の周辺から出血したりした結果、精巣に血液が送られなくなり、精子産生能力が一生損なわれることもある。

精巣捻転(精巣につながるコード状の精索がねじれてしまうこと)でも、迅速に手術しないと似たような結果になってしまう。また、ムンプスウイルスが精巣の炎症(精巣が腫れて痛くなる精巣炎)を引き起こし、精子が産生されなくなることもある。

ムンプスは広く知られているけれど、このウイルスが不妊の原因になるのは精巣炎を発症したときだけで、それ自体も非常に稀。

停留精巣も精子が産生されない大きな要因。将来の生殖能力が守られるのは、子どもの頃に精巣を陰嚢内に固定する手術を受けた場合だけなので、男の子は幼児期から定期的に検査を受ける。ただし、幼児期の精巣固定術は、将来の生殖能力を保証するものではない。

精索静脈瘤

精索静脈瘤は、精巣と腹部をつなぐ精索内の静脈が拡張して瘤(こぶ)のようになること。この疾患が男性の生殖能力に与える影響は不確かで、大きな物議を醸している。

精索静脈瘤は生殖能力に問題がない男性の15~20%、問題がある男性の30~40%に見られる。両側に生じることもあるけれど、左側だけのケースが圧倒的に多い。患者からは、立った状態で陰嚢を見ると「袋の中に虫がいるみたい」という声が多く聞かれる。

専門医の話では、精索静脈瘤の影響で精巣が熱を持ったり、精巣に血液が送られなくなったりすると、体の老廃物が蓄積し、生殖能力が衰える。また、精索静脈瘤に加えて喫煙などのリスク因子があるときは不妊のリスクが高くなる。

精子障害

不妊症の男性の多くは、精子の数、動き、形に問題がある。また、射精を長期的に自制したせいで精子の動きが悪くなることもある。幸いにも、それぞれの精子の構造的および生化学的な異常は現代の技術によって特定可能。

染色体異常

染色体(遺伝物質の格納庫)の異常は不妊症の男性の2~20%に見られ、次の2つの理由から生殖能力を低下させる。

・染色体異常は精巣の発育に影響を及ぼす。通常は性染色体の異常で、中でも特に多いのはクラインフェルター症候群。性染色体にはXとYの2種類があり、通常、男性はX1本とY1本を含む計46本の染色体(46XY)を持っている。でも、クラインフェルター症候群の男性はXが1本多く、計47本の染色体(47XXY)を持っている。
・染色体異常は細胞分裂と精子産生を阻害する。

性機能障害

性機能障害が不妊の主な原因になっているカップルは全体の約5%。性機能障害には以下のものが含まれる。

・勃起不全(満足な性行為を行うのに十分な勃起が得られない、または維持できない状態)
・早漏
・射精障害
・上記以外の理由でペニスを膣に挿入できない

ホルモンの問題

テストステロンの不足は生殖能力を低下させる。この問題の原因は、精巣におけるテストステロンの産生にあったり、テストステロンの産生をつかさどる脳の下垂体や視床下部にあったりする。

下垂体で産生されるホルモンのプロラクチンが多すぎる場合(高プロラクチン血症)も生殖能力が低下する。

生殖能力を低下させる基礎疾患

生殖能力を低下させる疾患には、以下のようなものがある。

・発熱:インフルエンザ、肺炎、重度の風邪に伴う高熱は精子の産生と質に影響を及ぼすけれど、通常は数週間で回復する。
・糖尿病:自律神経系の機能にダメージを与え、勃起不全や射精障害を引き起こすことがある。
・高血圧:直接的な影響、あるいは薬の副作用で勃起不全を引き起こすことがある。
・冠動脈疾患:勃起不全を引き起こすことがある。ペニスや心臓における一般的な動脈硬化が原因のこともあれば、心臓の治療に使われる薬が原因のこともある。
・神経障害:多発性硬化症、脳卒中、脊椎のケガや病気は、どれも勃起不全や射精障害の一因となる。
・腎疾患:慢性腎不全で体内に老廃物が蓄積すると、精子の質や生殖能力が低下する。場合によっては勃起不全が生じることも。
・がん:一部のがんは生殖管や内分泌(ホルモン分泌)系に影響を与え、生殖能力を低下させることがある。その他のがんでも、治療に使われる薬や放射線によって精子の産生が著しく減少、あるいは完全に停止することがある。治療中のストレス(以下参照)も生殖能力を低下させる要因の1つ。
・アルコール依存症:アルコールは精子にとって有害な物質なので、飲みすぎは精子の質と生殖能力の低下を招く。
・ストレス:ストレスは生殖能力に悪影響を与えかねない一連のホルモン変化を引き起こす。ストレスの原因は非常に多く、不妊に関する不安もその1つ。

生殖能力を低下させる薬

生殖能力を低下させる処方薬や娯楽用薬物は少なくない。処方薬が原因と思われるときは担当医に相談を。勝手に飲むのをやめるのは絶対NG。

生殖能力に影響を及ぼす可能性がある娯楽用薬物には、以下のものが含まれる。

・アルコール:精子の数と質を低下させる。
・タバコ:精子の動きを悪くする可能性がある。
・マリファナ:ホルモン産生に悪影響を及ぼす可能性がある。
・アヘン剤(ヘロインやモルヒネ):ホルモン産生に影響を与える。
・アナボリック(タンパク質同化)ステロイド:ホルモン産生に影響を与える。

環境有害物質や放射能

おそらく環境有害物質が原因で男性の精子数が減少し、生殖能力が低下していることを示す研究結果は広く報じらている。

逆に何の変化も見られないことを示す研究結果も同じだけあるけれど、見出しとしてはイマイチなので、メディアに取り上げられることが少ない。いずれにせよ、生殖能力に悪影響を与えかねない環境有害物質が50年前より多いことだけは確か。

以下のような環境有害物質は、ホルモンをかく乱して生殖能力を低下させる恐れがある。

・アルキルフェノール:業務用および家庭用洗剤に含まれている。
・ラッカー:食品缶詰のコーティングや歯科治療に使われる。
・ダイオキシン:紙の製造過程や変圧器の処分過程で生じる。
・有機塩素系殺虫剤:シリアル、柔らかいフルーツ、キャベツに使われるリンデン。
・フタル酸エステル類:一部の大豆製品に含まれる。
・植物性エストロゲン:大豆など、一部の植物性食品に含まれる。
・ビンクロゾリン:ホルモンをかく乱し、精巣に害を与える。

専門医に相談するべきタイミング

生殖能力には女性の年齢をはじめとする多くの要素が関わっているけれど、若いカップルが定期的なセックスで自然に妊娠する確率は、1回の生理周期で約20%とされている。

この確率が一年を通して変わることはないけれど、ほとんどのカップルは6カ月以内に妊娠することが予想される。だから、1~2カ月で妊娠した友達と自分を比べて焦る必要は一切ない。

先述の通り、一般的に不妊とは避妊なしのセックスを1年以上続けても妊娠に至らない状態をいうけれど、6カ月前後で専門医に相談するのは合理的。ほとんどの医師は1年にこだわらず、理解を示してくれるはず。

男性不妊症の診断

不妊に関する相談は産婦人科や不妊治療専門クリニックへ。検査は1人ずつよりも、あなたとパートナーが同時に受けたほうがいい。

大切なのは、どちらか1人に罪を負わせないこと。片方に明らかな問題があったとしても、もう片方に全く問題がない可能性は極めて低い。妊活や不妊検査は、それだけでも十分大変。お互いに敵対すると2人の関係に余計な負荷がかかってしまう。

原因不明の不妊症

徹底的に調べても不妊の原因が見つからないことはある。2人とも健康なのに、どういうわけか妊娠しない。これはつらいし、納得がいかないかもしれないけれど、決して珍しいことじゃない。

男性の生殖能力を維持・向上するには

以下のアクションは男性の生殖能力の維持と向上に役立つ。

・健康的でバランスのよい食生活を送る。
・定期的に運動する。
・健康的な体重を維持する。
・タバコを吸わない。
・お酒を飲みすぎない。
・娯楽用薬物を使わない。
・ストレスの緩和に努める。

以下の2つのテクニックは精子の質を改善する可能性があるけれど、それで妊娠率が上がることを示すエビデンスは皆無に等しい。

・きつい下着の代わりにボクサーパンツを履く
この有効性を示すエビデンスは非常に少ない。とあるオランダの研究では、男性がピッタリしたプラスチックの下着の上にピッタリしたレザーパンツを履いたところ精子の質が低下したが、この2つを別々に履いたときは問題なかった。ブリーフでも、たぶん大きな違いはない。

・冷たいシャワーを浴びる、または陰嚢を冷水に浸す
その一瞬は不妊のことを考えなくて済むけれど、このテクニックの有効性を示すエビデンスは存在しない。

男性不妊症の治療

不妊治療(通常は泌尿器科や産婦人科)の専門医や生殖医学の専門家なら、男性不妊症の一般的な原因の数々を突き止められる。

精管閉塞が原因で不妊の男性には、精路再建手術が勧められるかもしれない。

とはいえ、それで妊娠が保証されることはなく、体外受精のような生殖補助治療を受けたほうが妊娠率は上がりやすいと思われる。

なお、不妊治療は場合によって高額になるけれど、それでもやはり妊娠が約束されるわけではない。

今後に向けて

残念ながら、精子の質や産生に影響する障害のほとんどは、治療の手だてがないか治療の効果が現れにくい。

そんな中、生殖補助医療(体外受精や精子提供など)は重度の男性不妊症で悩むカップルにも妊娠の可能性を与えてくれる。

※この記事は、『Netdoctor』から翻訳されました。
 

Text: Medically reviewed by Dr Juliet McGrattan (MBChB) and Based on a text by Dr John Dean, specialist in sexual medicine Translation: Ai Igamoto

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