※本記事は2023年5月24日にWomen's Healthで掲載されました。
イチジクのような形をした卵巣は子宮の両側にあり、女性の生殖器系はもちろん他の面でも極めて重要な役割を果たしている。その機能と健康管理方法を知っておくのは、私たち女性にとって絶対マスト。
卵巣の役割
ご存じの通り、卵巣は卵子の家。顕微鏡でしか見えないほど微細な卵子には、女性のDNAが詰まっている(精子と受精した卵子の半分は男性のDNA)。卵巣では卵子が毎月12個ほど作られるけれど、順調に発育して卵巣を出発し、卵管を通って子宮にたどり着くのは1個(双子の場合は2個)だけ。しかも、子宮にたどり着いたところで精子に出会えるとは限らない。
卵巣は卵子を蓄える傍ら、ホルモンも産生している。その大半は女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロン。でも、卵巣では男性ホルモンのテストステロンもそれなりに作られる。このようなホルモンは卵巣から血流に乗り、全身を循環しながら、生殖器系の健康管理や骨・筋肉・脳の発達を支えている。
卵子について
女性は100~200万個の卵子を持って生まれるけれど、思春期に入る頃には、その数が30万個まで減少し、閉経を迎える頃にはゼロになる。その多くは卵胞細胞の自然死(アポトーシス)によるもので、もともと微細な卵胞細胞は死んでから体内に吸収される。生涯で排卵される卵子は約400個。排卵(卵子が卵胞および卵巣を飛び出して、卵管経由で子宮に向かうこと)は卵子の数がゼロになるまで毎月起こる。卵胞はホルモンを分泌し、妊娠に向けて子宮内膜を整える。でも、卵子が受精しなかった場合には、ホルモンの分泌が止まって生理が来る。卵子の質は時間と共に低下する。これも30代後半以降は自然妊娠が難しくなる理由の1つ。
卵巣の病気
1.卵巣嚢胞
卵胞から卵子が放出されない状態が長く続くと、卵胞が液体で満たされて嚢胞になる。ほとんどの嚢胞は小さく痛みを伴わないため、骨盤検査を受けるまで気付かない人が多い。卵巣嚢胞は自然消滅することが多く、がんの前兆である可能性も低いけれど、腹痛、膨満感、生理不順を引き起こすことがある。
2.多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)
女性の約2割が抱える多嚢胞性卵巣症候群(PCOS)は、卵巣から分泌される男性ホルモンが多すぎるせいで排卵が滞り、卵巣内に嚢胞ができてしまう疾患で、ニキビ、生理不順、体重や体毛の増加といった症状を特徴とする。PCOSの管理には低用量ピルが使われることもある。
3.卵巣がん
卵巣がんの診断を受ける女性はアメリカだけでも毎年2万人以上。早期発見が難しいことから、卵巣がんは“サイレントキラー”と呼ばれている。卵巣は膀胱と腸の近くにあるので、その卵巣ががんになると、おなかの張り、腹痛、腰痛、骨盤痛、消化不良、下痢、便秘、頻尿、膨満感、活力や食欲の減退といった症状が現れる。自分の体に注意を払い、このような症状が1カ月に12回以上見られるときは必ず医師に相談を。
閉経後の卵巣に起こること
閉経は卵巣が休息に入ったことを知らせるもので、閉経前の数年間は“閉経前期”と呼ばれる不安定な時期。卵巣が年を取ると、排卵のタイミングを知らせるホルモンのシグナルが感知されにくくなるため、必要以上にホルモンが分泌されて、全体的なバランスが崩れてしまう。その結果、生理不順、気分のむら、不眠、ホットフラッシュなどが現れることもあるけれど、このような症状はコントロールが可能なので一度医師に相談を。
卵巣を健康に保つには
以下の3つのアクションで卵巣の調子を整えよう。
年に一度の骨盤検診:無症状の嚢胞や腫瘍を早い段階で発見できる。
タバコを吸わない:タバコの煙に含まれる化学物質は、卵子を構成する遺伝物質を傷つけて早死にさせてしまう。これが受胎能力の低下や早発閉経につながることも。
健康的な体重を維持する:ホルモンバランスがよくなるので生理不順になりにくい。PCOSの症状も楽になる。
※この記事は、アメリカ版『Prevention』から翻訳されました。
Text: Alyssa Jung Translation: Ai Igamoto