※本記事は2023年5月4日にWomen's Healthで掲載されました。
セックス中は、いろいろなことが頭をよぎる。それが全部「これ最高！」に近いことならいいけれど、「オーブンの電源切ったっけ？」というランダムな思考に加えて、突然「おしっこ！」がしたくなるのは一体なぜ？ せっかくのムードも台無しにしてまで体が伝えようとしていることは？
実際にトイレ休憩が必要なケースもあるけれど、あの“尿意”は潮吹きや射精を伴うオーガズムが近いことを示していることがある。あるいは、あなたの膀胱が問題を知らせるために非常ベルを鳴らしているか。でも、その違いを見極めるのは残念ながら難しい。
潮吹きに関する研究結果は少ないうえに物議を醸しているけれど、潮吹き自体は決して悪いことじゃない。「セックスはぐちゃぐちゃでもいいんです」と話すのは、セクシュアルヘルスサービスTBD Healthの臨床オペレーションディレクターで上級看護師のエイドリアン・トン。「セックスの最中に潮吹きや射精の形で体液を放出するのは、性的に興奮している証拠でもありますよ」
そこで今回は、セックス中に体が見せる驚くべきパフォーマンスをアメリカ版ウィメンズヘルスから詳しく説明。排尿が近いのか、オーガズムが近いのかを見分けられるようになれば、ベッドの中でも一安心。
膣所有者でセックス中に尿が出ることはある？
あるけれど、その体液がいつも尿とは限らない。
一部の疾患は、セックスの最中に強烈な尿意や尿漏れを引き起こすことがある。アメリカの国立衛生研究所によると、アメリカに住む女性の約4人に1人は、失禁（膀胱制御の喪失）や不快感、活動量削減の必要性を伴う骨盤底障害を抱えているそう。
ただし、本当に失禁の場合は現場がベッドだけに限られないはず。「骨盤底や膀胱に圧力が加われば、いつでも失禁する可能性があります」とトン。「例えば、咳やくしゃみをしたときや笑ったときです」
それでも性交中に漏れているのは尿という確信があるのなら、まずは自分の失禁タイプを特定しよう。骨盤のリハビリを専門とするパーソナルトレーナーのスージー・グロンスキによると、失禁には挿入時失禁とオーガズム時失禁の2種類がある。「挿入時の失禁は、腹圧性尿失禁の一種とされています」。骨盤底筋の弱さが問題になるのも、この腹圧性尿失禁のケース。
一般的に、骨盤底筋が弱い場合はケーゲル体操で骨盤底筋を強くするべきと言われるけれど、強すぎるのも逆によくない。緩すぎてもきつすぎても尿意が生じてしまうため、新しいエクササイズを始める前に病院で検査と診断を受けることが大切。
グロンスキによると、オーガズム時失禁は挿入時失禁ほど多くなく、通常は過活動膀胱に原因がある。そして、このタイプの失禁はオーガズムと同時に起こるため、潮吹きと見分けるのが難しい。
ペニス所有者の場合は？
この場合もあるけれど、比較的珍しい。
ペニス所有者のオーガズム時失禁（射精時の排尿）は、前立腺の手術（前立腺切除術など）に関係していることがある。「前立腺切除術では、膀胱の首部分にあたる内尿道括約筋が切除されます」とグロンスキ。「内尿道括約筋と外尿道括約筋（膀胱の頭頂部にあたる）は尿の制御に深く関係しています」。また、タムスロシンやテラゾシン（前立腺肥大や高血圧の治療薬）は前立腺と膀胱の筋肉を弛緩させ、内尿道括約筋を切除したときと同じ状況を引き起こす。
グロンスキによると、セックス中の失禁に悩むペニス所有者は以下の5つを検討してみるといい。
・セックスの前に膀胱を空にする
・ペニスリングで尿漏れを防ぐ
・骨盤底筋を鍛えてみる
・コンドームを使用する
・人工尿道括約筋埋め込み術か尿道下スリング術を受ける
でも、オーガズム時失禁が見られるようになったときは、自宅療法を試す前に病院で検査を受けて。
潮吹きの潮は尿？
短めに言えば「NO」。より正確に言うと、オーガズムの前後および最中に膣から出てくる液体の“正体”に関しては、科学者や医師の意見が一向に一致しない。
それどころか、性的な興奮や女性のオーガズムで分泌される液体の種類は1つじゃないという声もあり、臨床解剖学専門誌『Clinical Anatomy』に掲載された2022年の論文レビューは、女性の射精と潮吹きは「似ているけれど病因学的に違う現象」としている。
グロンスキいわく女性の射精は、性的な興奮やオーガズムに反応する形で、スキーン腺（膣壁の前面にあり、セックス中は“滑り”をよくする目的で粘液を含む液体を分泌する）から液体が分泌されることをいう。「射精時に分泌される液体は白くて少しトロッとしています」
一方の潮吹きは女性の射精よりも珍しい。「潮吹きは興奮時やオーガズムの最中に起こることが多く、普段は尿が出る尿道から尿に似た液体が出てきます」とグロンスキは説明する。潮吹きの感覚が排尿の感覚に似ているのは、これが理由。
ちなみに、オーガズムと射精は（ペニス所有者の場合でも）生物学的に異なるプロセスなので、どちらか一方しか起こらないこともあるし、両方が別々のタイミングで起こることもある。ペニス所有者の場合は両方がほぼ同時に起こるため、その違いが分かりづらい。でも、膣所有者の場合は、オーガズムの前に潮吹きが（場合によっては複数回）起こることも少なくない。実際は、このタイムラグが余計な混乱を生み出して、潮＝尿という憶測に拍車をかけている。
液体の正体を自分で確かめたいときは、グロンスキが言うように科学的な見地からニオイを嗅いでみるといい。「尿のニオイは一瞬で分かります」。より詳しく調べたいなら「お尻の下にタオルを敷いて、液体の色をチェックしましょう」。黄色で尿のニオイがするなら、それは尿。そうでないなら人生初の潮吹きをしたのかも（おめでとう！）。
結局のところセックスでなによりも重要なのは、あなた自身が気持ちよく楽しめること。万が一の失禁や潮吹きに備えたいなら、あらかじめベッドにタオルを敷いておこう。
尿意の理由と対処法
婦人科医のアリッサ・ドウェック医学博士によると、セックス中に尿意を感じる理由は1つじゃない。中でもとくに多いのは、実は尿が溜まっていたのに、セックスが始まるまで気付かなかったというパターン。挿入や体位の変化で膀胱が圧迫されて、急に排尿の必要性に気が付くことも。
ドウェック博士によると、膣が乾燥している人や潤滑ゼリーやコンドームに過敏な人は尿道が炎症や腫れを起こしやすく、それが尿意の原因になることもある。根本的な原因を突き止めたいなら、疑わしい刺激物を一度全部排除してから1つずつ使用を再開し、問題の症状が改善するか悪化するかを見ればいい（コンドームが怪しいときは、コンドーム自体の使用はやめずにメーカーを変えてみよう）。
骨盤療法士のレイニー・ギヴンスは、セックス中の尿意や失禁を防ぎたい人に以下の対策を勧めている。
①セックス前に膀胱を空にする。
②セックスの少なくとも2時間前から膀胱刺激物質（アルコール、カフェイン、ニコチン、炭酸飲料など）の摂取を減らす。
③膀胱に圧力がかかりにくい体位（横向き、騎乗位、バック）を試す。
④挿入を浅くして膀胱にかかる圧力を減らす。
⑤尿意のせいで気が散ってしまうなら素直にトイレ休憩を。
逆に尿意の原因が潮吹きや射精にあると思うなら、好きなだけビショビショになればいい。「女性の中には、潮が気になりにくいウォータープレイ（お風呂やシャワー室でのセックス）を好んでする人もいます」とドウェック博士。
むしろ潮を吹きたいという人は、セックストイでGスポットを刺激したり体位を変えてみたりして（セックスカウンセラーで性科学者のアレックス・ロボイによると、騎乗位は女性がイキやすいポジション）。
病院へ行くべきなのは、どんなとき？
セックス中ずっと尿意を感じる人や、いつも尿が漏れてしまう人にはなんらかの問題があるのかも。例えば、尿路感染症。ドウェック博士によると、頻繁に切迫した尿意を感じ、排尿にヒリヒリした灼熱感が伴い、そのような症状がセックスで悪化するのは尿路感染症の顕著な特徴。発熱、血尿、腰痛、悪臭、悪寒が見られるときも病院へ。このような症状からは性感染症が疑われるので、病院へ行くことが一段と重要になる。
これを機に、救急箱の中身を確かめて説明書を読んでみるのも名案。トンによれば、利尿作用のある薬を使うと尿意を感じる頻度が高くなる。また、妊娠、出産、閉経といったライフステージや体の変化で失禁が生じたり、尿意の切迫感が増したりすることもある。
結論：自分の健康状態や体に起きていることが不安なときは、まず医師に相談を。疾患の可能性が排除されたら、あとは神秘的な体の仕組みを受け入れて、その感覚を心ゆくまで味えばいい。レインコートがいるくらいビショ濡れになっちゃうかもしれないけれど！
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Stella Harris And Caroline Shannon-Karasik Translation: Ai Igamoto
