2024年11月18日(月)、 「ルーム・トゥ・リード」CEOのギータ・ムラリ博士と、モデル・起業家として活躍する佐藤マクニッシュ怜子さんを迎え、トークセッションを開催。“チェンジメーカー”として活躍する2人が語った内容や、参加者を巻き込んで行われたワークショップの様子をお届け!
キャリアを切り開いてきた二人によるリアルトーク
世界24カ国で子どもの読み書きの習得と女子の教育に携わる国際支援団体「ルーム・トゥ・リード」と「エル・ガール」によるイベント「You Create Change with ELLEgirl × Room to Read 〜あなたが未来を変えていく〜」が、広尾のEAT PLAY WORKSにて開催された。
イベントは、ルーム・トゥ・リード・ジャパン共同理事長・正直ゆり氏による活動紹介からスタート。世界では7人に1人が文字の読み書きができず、その約3分の2が女性や少女という現状が共有された。「ルーム・トゥ・リード」は女子教育プログラムを通じ、ライフスキル教育やメンタリング、自転車・制服の支援などを通し、少女たちを中学入学から高校卒業までの最大7年間支援している。
同イベントでは、「ルーム・トゥ・リード」が制作した映像作品『少女達が未来を変えていく』(原題:She Creates Change)を起点に、ギータ・ムラリCEOと佐藤マクニッシュ怜子さんが社会に変化をもたらしてきた経験や挑戦をどう乗り越えてきたか、力強いメッセージでそれぞれの視点からわかりやすく紐解いた。
上映された動画は、パンデミックで従来の教育が困難になった状況下で新しい方法での支援を模索し、本やラジオ、テレビ、SNS、YouTubeなどさまざまな手段を通して、困難を乗り越えるために必要なロールモデルやツールを提供することを目指すもの。本イベントでは教育支援を受けたひとり、バングラデシュに暮らすケヤという少女のストーリーを上映。
性別を理由に教育を受ける機会や安全性が脅かされたケヤは、「ルーム・トゥ・リード」のプログラムで自身の権利について学んだことをきっかけに立ち上がり、コミュニティに大きな変化をもたらした。そして今は、政府機関に勤めるという夢に向かって努力している。
教育を受けられない、女性として人権が保障されないという状況では、自身の置かれた状況を“運命”として受け入れてしまうケースも少なくない。「困難な状況でも諦めずに立ち上がったケヤは、私のヒーローです」とギータさん。「女性の活躍を促すためには、女性個人の努力を支援するだけでなく、社会全体でサポートする仕組みが必要だと考えています」。
“マジョリティが変われば、社会が変わる”
ロールモデルの存在は重要だと、「アマテラス」を起業した当時を振り返りながら佐藤さんは話す。
「社会における女性の立ち位置は、問題視されている通り。私自身も起業した当初は“女性”で“若い”という理由で、怖い思いや悔しい経験をたくさんしました。徐々に変わってきているとは思いますが、女性だからという理由で機会が限られたり、平等に扱われない状況は存在すると思います」
「マジョリティが変われば、社会が変わってくると思う」と佐藤さん。「活躍する女性が増えたり、実際に声をあげる人が増えていくことで、社会が変わっていくるのではないかと思います」。
ギータさんもこれに同意し、「誰しもロールモデルをもつことは大切で、そこから多くを学ぶことができるはずです」とコメント。
「女性が活躍することで、社会は大きく変わります。世界には多くの女性リーダーが活躍しているのも事実です。私もグローバルな組織を率いるなかで、さまざまな決断を迫られますが、女性や子どもたちの未来のためにより良い選択をする存在でありたいと考えています」
“自分だからこそできること”を見つける
社会を良くしたいという思いを抱えながら、障壁や挑戦を強いられる場面も乗り越えてきた二人。希望をもって進めてきたその原動力には、自身の置かれた環境や経験が大きく影響しているのだそう。
「私の祖母は14才で、曾祖母は2才で結婚させられました。母も13歳で結婚の話を持ちかけられたそうですがそれを断り、看護師としてアメリカに渡り、私を育ててくれました。おかげで私は大学で統計学を学び、NPOで働く今につながりました」(ギータさん)
「母が下した決断は、母自身の人生を変えただけでなく、私を結婚を強制される子どもから、CEOへと導きました」とギータさん。「母が私たち家族にもたらした変化を、世界中の女の子たちにも届けたい。それが、私の活動のモチベーションです」。
海外で育ち、日本文化の魅力を強く感じたからこそラウンジウェアブランド「アマテラス」を立ち上げた佐藤さんにとって、活動の原点は自身の半生そのもの。
「私のモチベーションは、何よりもパッションなんです」と佐藤さん。「小さい頃から、誰かに言われたことをやるのが苦手で……。自分が本当にやりたいこと、心から熱中できることに挑戦することが、私にとっての原動力なんです」。
「自分の力で成功したいという強い思いから、やりたいことにすべて挑戦してみて、『情熱を持って取り組んだことは、結果がどうあれ後悔はない』ということを実感。やりたいことをやる、というシンプルなことが、いかに大切かということを学びました」
ただ、「経験から生まれた、自分だけのアイディアを形にするのは難しいし、日本の社会でそれを体現している人が少ないからこそ、勇気がいること」とも。
「何をしたらいいか、どうやって見つけたらいいですか、という質問を日々いただきます。今気づいていなくても、幼い頃に夢中だったものや、お母さんから教わったこと、そんなところにヒントがあるかもしれません。私は22歳のときに悩んで、マインドマップを書いて考えました」。
佐藤マクニッシュ怜子さんから次世代へ向けたアドバイス
トーク後のQ&Aでは、事前に募集した質問に回答。社会課題について周りに知ってほしいと思うときに、きちんと届けるための発信のコツなどが挙げられた。
社会課題についてのSNS発信のコツは?
社会課題について周りに知ってほしいと思うとき、全世界に発信できるSNSは便利なツールですが、日本では社会問題について話しにくい空気がある、と佐藤さん。「お笑いやエンタメ要素を取り入れて、見てもらえるような内容を考えるのもひとつの方法だと思います」。
ギータさんは、「ポジティブなメッセージを発信すること」と、「ルーム・トゥ・リード」でSNS発信をする際に守っているTipsを伝授。
「子どもたちが苦しんでいます、と伝えるのではなく、『子どもたちを支援すれば、こんな風に明るい未来が待っている』と、希望に満ちた未来を描いて伝えるようにしています。子どもたちを、尊厳ある存在として扱うことを大切にしているからです」
また、「若い世代の発信者が問題提起をすることも重要だと思う」と佐藤さん。
「同世代の人が声をあげることで、興味をもってもらいやすいのでは。私自身はInstagramやYouTubeで発信したり、『アマテラス』のイベントを開催して、みんなと話し合える場を作っています」
自己実現と社会貢献のバランスの取り方
組織のリーダーとして、“自分のやりたいこと”と社会貢献のバランスはどのようにとっているか、という質問も。ギータさんの回答は、「ビジネスを通して社会貢献する働き方がある」というもの。
「最近では、社会貢献に関心を持ってくれる企業が増え、私たちNPOも企業の力を借りて活動できるようになりました。社員の方にボランティアとして参加してもらったり、企業とコラボレーションして新しい取り組みを始めることも可能です」。
佐藤さんは、「社会貢献は時間がかかることだから、事業としては目立たないことがある」としながらも、着物文化を通じて、「アマテラス」と社会貢献を結びつけたいと考えているそう。
「『アマテラス』で着物事業を始めるにあたって、日本の着物産業について深く調べているうちに、後継者不足という大きな課題があることを知りました。着物を通して日本の文化を世界に広め、日本の社会に貢献したい。着物の魅力を伝え続けることで、日本の文化を守ることにもつながると信じています」。
日本に暮らす自分にできるアクションとは
イベント後半では、「自分にできるアクション」を考えるワークショップを開催。会場に集まった30名ほどの参加者が、それぞれの思いをノートに綴った。
「まずは発信していく」
「まずは発信していくことが重要。その投稿が伝染していくと思う」という意見に、佐藤さんは「今日ここに参加したことが行動の一歩。みなさんの投稿を楽しみにしています」とコメント。「発信した内容が、周りの人の心を動かすことが変化につながるでしょう」とギータさん。
学びから始まるアクションも
賃金格差や家庭内のジェンダーロールについて、大学で勉強中という他の参加者からは、「学ぶこと自体が、社会を変えるための第一歩になる」という意見も。
「大学生の方が社会問題に関心を持ち、具体的な行動に移そうとしていることに感動しました」と佐藤さん。ギータさんは「学びをきっかけに行動に移すことで、社会を変えていくことができるはずです」と語りました。
投稿1件につき約100円が寄付へ!ハッシュタグキャンペーンを開催
すぐにできるアクションとして、 本イベントを記念したハッシュタグキャンペーンを開催。12月25日(水)までに、ルーム・トゥ・リード・ジャパンの公式SNSアカウント(Instagram、Facebook、 Xのいずれか)をフォローし、以下の3つのハッシュタグをつけて自身のSNSに投稿すると、投稿1件につき長年の支援者から女子教育プログラム1日分に相当する約100円が寄付される。イベントに参加した方も、この記事を読んでいるあなたも、この機会にぜひ投稿してみて!
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来年で25周年 「ルーム・トゥ・リード」はさらに活動を加速
「ルーム・トゥ・リード」は、来年で活動25周年を迎える。これまで4500万人以上の子どもたちに教育の機会を提供し、より多くの子どもたちに教育が届くように、活動を加速させていくと語った。2027年の終わりまでに、毎年支援する子どもたちの数、支援するコミュニティの数、協力するパートナーの数をそれぞれ倍増させることを目指す。
「子どもたちが楽しく学べるように、学校以外の教育機関やメディアと協力し、新しい学びの場を創出します。最新の研究成果に基づいて、効果的な教育プログラムとなるよう改善も続けます。また、ジェンダー平等など多様な価値観を尊重した教育プログラムを拡充し、地域政府や学校、他のNGOと協力しなはら、地域全体の教育システム改革を目指します」。
日本でもさまざまなカタチで「ルーム・トゥ・リード」の活動に協力できる。詳細はウェブサイトからチェック。
参加者の熱気に包まれたイベントの様子は、動画からチェックして!
問い合わせ先
ルーム・トゥ・リード [email protected]
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Photo:RISAKO SUEYOSHI Text : TOMOKO TAKAHASHI