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「ジェンダーバイアス」から自由になれば、セックスはもっと楽しめる~OliviAさんに訊く、セックスとジェンダー観の関係性

ジェンダーバイアスとは、「男らしさ女らしさなどの 男女の役割に関する固定的な観念や、それに基づく差別・偏見・行動など」のこと。セクシュアルウェルネスに関するトピックの中でも、悩みを抱える人が多い性行為も、ジェンダーバイアスが深く関係しているようです。今回は、ラブライフアドバイザーのOliviAさんにジェンダーバイアスと性行為の関係性について、そして、ジェンダーバイアスから自由になって性行為を楽しむための方法についてお聞きしました。

Text : NORIKO MASUMOTO

セックスにひそむジェンダーバイアスって?

―そもそも性行為にまつわるジェンダーバイアスには、どんなものがあるのでしょうか?

異性間の性行為に関して言えば、女性が受け身であり、男性がリードするものという考え方がありますね。女性は男性に求められて行為が始まり、一方男性は、女性を喜ばせて満足させることこそが理想であると思い込んでいる人が多いと思います。この固定観念を持っているがゆえの悩み相談も多いんです。

―具体的にどんな悩みがあるのでしょうか?

私に寄せられる相談は、セックスレスと性交痛に関するものが多いです。その中でもセックスレスに関しては、ジェンダーバイアスが深く関係しているなと感じています。男性が誘ってセックスが始まることが多いので、女性から誘いたくても誘えず、セックスレスにつながってしまうという例もあります。

セックスレスに悩む女性に多いのが、性的な魅力と自分のアイデンティティを結びつけて考える「セクシャルアイデンティティ」を持っている人です。パートナー男性に欲情されてこそ女性としての魅力があり、そしてそれこそが自分の価値であると考えているのが特徴です。男性の場合は、「パートナーに求められない=自らに価値がない」と考える人はそこまで多くないのですが…。

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―女性から誘いづらいと思う一因として、セックスに対してオープンな女性が揶揄されるような風潮も関連しているように感じます。

一対一の関係で、パートナーと欲情しあうというのは、恋人同士の関係の醍醐味でもあるはず。男性の場合は、“多数の女性とセックスする=モテる”という認識になるのに、女性だと“ビッチ”などと言われてしまうところにもギャップがあるのではないでしょうか。控えめな女性像を良しとするバイアスは「ある程度強引なほうが女性が喜ぶ」という男性の思い込みにもつながり、時に強制性交などの深刻な性被害に繋がってしまうケースも。

―型にはまったセックス観に由来するお悩みは、他にもあるのでしょうか?

挿入することありきのセックスについて考えるなら、男性器がうまく入らずに痛みを感じるという悩みは非常に多いですね。男性側の相談は、早漏や射精遅延(遅漏)、中折れなど、射精に関するコントロールができないということ。これもやっぱり挿入ありきのセックスを前提としているためですよね。早いと恥ずかしいという認識があるのは、エロティックな小説や漫画などで、持続力があって女性を満足させられるというスタイルが多く描かれていて、それがすべてだと思ってしまうとコンプレックスに繋がるのではないでしょうか。エンタメとして誇張されたセックスの情報が蔓延し、“こうあるべき”と型にはまった考えに陥ってしまう人が多いがゆえ、スキンシップの延長にあるセックスをみんな認識していないのだと思います。

―そうした場合、相談に来られた方にはどんなアドバイスをしていますか?

まず悩みの根本にあるジェンダーバイアスを自覚してもらいます。ジェンダーに関係なく、どちらが誘ってもいいんですよ、そして射精にこだわりすぎないのも一つの方法ですよともお伝えします。

そして、やはり大切なのは、当事者の間で話をすること。私は、行為の最中にだけセックスについて話をするのではなく、もっとカジュアルにさらっと話せるようになればと思っているんです。性のトピックって幅広いですし、会話のきっかけになるようなコンテンツも少しずつではありますが増えています。性感染症などの病気や緊急避妊薬などのアイテム、そしてセックスの頻度などを「今日のご飯何にする?」とくらいの感覚で、ネットのニュース、ドラマ、映画をきっかけに話してみること。そういうことを話し合える関係性になれば、セックスを取り巻く空気感も変わってくると思います。

 

世界でも日本でも、セックスにおけるジェンダーバイアスは存在する

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―性行為にまつわるジェンダーバイアスは、“奥ゆかしい女性”がよしとされてきたような、日本のステレオタイプな価値観にも関係しているのでしょうか?海外の現状はいかがですか?

以前、海外で行われた「プレジャーギャップ調査」では、「セックスを楽しいと思えない」と答えたシス男性の4倍の数のシス女性がYESと回答したという結果が出ています。日本国内の別の調査でもギャップが見られました。さらに、オーガズムに達したふりをしていると回答した女性が6割を超えたという結果もありました。これにより、自分よりも男性の快感を優先しているという傾向が見えますよね。日本だけではなく、海外でも似たような状況なのだと感じました。

―セックスに関する価値観は時代とともに変化してきているものでしょうか?

若い世代の相談者と話していると、恋愛の段階においてはどちらがデートに誘うとか、食事の料金を払うなどにおいても対等な関係性であるように見えるんですが、いざベッドの上になると、男性にリードしてほしい、男性のリードに従うという人が多くて、まだその部分は根深いんだなと感じています。

セックスの相性を考えるうえで大切なことは“体の形状”ではなく、“話し合える関係性”に目を向けること

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―ジェンダーロールにとらわれず、パートナーとフラットなセックスを楽しむためにはどうしたらいいでしょうか?

 大切なのは、「二人でどうしたいか」を追求することだと思います。例えば、女性が積極的に男性を攻めるような行為も、二人にとってすごく興奮するものになるかもしれないし、セックスの幅が広がって楽しみ方も二倍になると思います。

その場合、「今日は私が積極的に攻めたい」と最初に言っておくのがおすすめです。言わないで進めようとすると男性側が戸惑って「それしなくていい」と言われていつもと変わらない流れになってしまったりもするので…。また、知らない体位をイラストを見ながら試してみたりなど、二人での共同作業としてみるのはいかがでしょうか。新しいツールを試してみるのもよいですよね。

また、二人で探っていくにあたっては、まずは自分のことを理解していないと話し合えないと思います。マスターベーションで自分が気持ちよくなる方法を探ったり、どのくらいの頻度でどんな行為をされたいのかなどを認識していることで、二人でのすり合わせが可能になると思います。

―体の繋がりのみがセックスではないということですね。

 そうですね。まずは挿入などの形式にこだわりすぎず、二人にとって最良のセックスを模索しておくことが重要です。そうすれば生理中や妊娠中などにも活用ができますし、解決できる性の悩みも多いはず。バリエーションが増えることでマンネリ防止にもなるのではないかと思います。異性愛者ではないカップルであれば、はなから挿入することだけがセックスとはならないわけで、ふたりの関係性やシーンに応じて、役割をリバーシブルにできると固定観念は払拭されますよね。

「セクシャルコンタクト」という言葉がありますが、日本性科学会の定義によれば、ここには挿入を伴う性行為だけでなく、パートナーと裸で抱き合うことやオーラルセックスなどさまざまなコミュニケーションが含まれます。エロティックな会話をすることだってある意味前戯であるとも考えられます。

挿入する側-される側といったような体の形状やステレオタイプなジェンダーロールにとらわれることなく、二人で楽しむためのコミュニケーションができるかどうかが重要なのではないでしょうか。

 

◆プロフィール

OliviA (オリビア)
ラブライフアドバイザー

女性・カップルに性生活の総合アドバイスを行う。日本と台湾で著書出版。近著「セックスが本当に気持ち良くなる LOVE もみ」 (日本文芸社)。
公式サイト https://olivia-catmint.com/
instagram @oliviacatmint

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