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【性的同意の定義】性的同意はどうやってとる? 同意年齢や性暴力について専門家が解説

性行為やキスをするときに確認するべきお互いの性的同意。この言葉をニュースやSNSで目にしたことがある人も多いのでは? 自分や相手の体、心のあり方を大切にするためにも、性的同意について知っておくことが大事。

性的同意の理解を深めるために、私たちはどのようなアクションを起こせるのか考えてみよう。

お互いの意思を確認する方法や、同意年齢、日本と世界における性暴力に関する法律について、「mimosas(ミモザ)」の理事を務めるあるみたらし加奈さんが解説。

今回解説してくれるのは......

kana mitarashi

みたらし加奈さん

東京都出身。大学卒業後、指定大学院へ進学し臨床心理の道へ。2020年6月には、初のエッセイ『マインドトーク-あなたと私の心の話』を出版。SNSを通して、精神疾患の認知を広める活動を行い、mimosasでは理事を務める。2020年よりELLEgirl UNIに参加。

 

1.性的同意は自分と相手の気持ちを尊重するもの

happy young couple lying in bed
Getty Images

セックスのときに確認するべき性的同意って? また、なぜ性的同意が必要なのか、その理由を解説。 

性的同意とは? 

性的同意とは、セックスやキス、体に触れるといった性的な行為をする前にお互いが確認するべき同意のこと。英語では「Sexual Concent」という。

どちらかが行為を望んでいないときはもちろん、意思がわからないときにも無理やりしてはいけないという考え方で、同意のない性行為はすべて性暴力(レイプ)となる

「同意」というのは、性行為に限らず学校や職場、家庭などでも日常的に行われているもの。性的同意とはこういったコミュニケーションの延長線上にあって、性行為の際もお互いの意思を確認しなくてはならない。カップルや夫婦間でも性的同意が必要である

「たとえば友人とランチに行くとき、相手の要望を聞かずに自分がラーメンを食べたいからラーメン屋に行くというのは、人と人とのコミュニケーションとして好ましくないですよね。もしかしたら相手は胃もたれしているかもしれないし、アレルギーがあるかもしれません。そういった意見をお互いに確認する必要があり、それは性行為も同様だと考えています」(みたらし加奈さん)

性的同意はなぜ必要なの?

お互いの気持ちを尊重するために、また、自分と相手の体を大切にするために意思を確認する必要がある。

「セックスがしたい」という日があれば、「疲れているから寝たい……」という日もあるはず。日によって気分や体調に変化があるのは、自分だけでなく相手も同じ。

「本当はしたくなかったのに断れなかった……」と思っていることもあり得るため、お互いの意思を確認しないで性行為をしてしまうと図らずもパートナーを傷つけてしまう可能性も。

性行為に限ったことではないが、自らの意思を伝えられてそれを受け入れてられる環境であることは、自分の心と体、生き方を大切にする重要な要素にもつながっていく。

「自分の体は自分のもので、それは相手も同様です。自分と相手の体の間には明確な境界線があって、そこを無理やり踏み越えることは空いてを傷つける行為です。性的行為を相手に強要してはいけないし、その逆も同じ。同意を取り合って性行為できるよう、普段からコミュニケーションしていくことも大切です」(みたらし加奈さん)

2.性的同意を取る方法

colourful studio portrait of two women
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性的同意を取るときに心掛けたいことをみたらし加奈さんが解説。

性的同意を取るときのポイント

性的同意を取るときに確認したい3つのポイントがある。

  1. 相手が強制されずNOが選択できる状態や環境であること
  2. 上下関係や社会的地位に脅かされていない対等な関係であること
  3. 1度だけでなく意思の確認は相手に合わせながらその都度しよう

積極的な意思を聞けるように、あなたがセックスをしたい相手なのか、したい場所であるのかも重要なポイント。

「『自分が相手の家に行ってしまったから過失があったのではないか』と自分を責めてしまう人もいらっしゃるのですが、あなたがYESと思っていない限り、そのときに着ていた服装や相手の家に行くという行為が性行為への同意にはなりません

たとえばあなたが酩酊して路上で寝てしまったとします。それを見た人があなたを助けずに財布を盗ったり、着ているものや大事なものを剥ぎ取ったりしたら窃盗ですよね。あなた自身は自責の念に駆られることもあるかもしれませんが、それは窃盗をした方に非がありますし、周りの人たちも『あなたが悪い!』とは言わないかもしれない。

でも、性暴力に関してはなぜか被害者の方に自衛の意識を持たされる傾向にあるように感じます。日本はセカンドレイプ( ※ )が行われやすく、法律でさえカバーしてくれない風潮があるので、意識を変える必要性があると感じています」(みたらし加奈さん)

※ セカンドレイプ:性暴力や性的被害を受けた人に対し、第三者が被害を思い出させるような発言をしたり、被害者自身に非があったのではないかと責めて被害者を精神的に追い詰める行為。

相手に寄り添ったコミュニケーションをする

性的同意を取るに至るまでは、相手が嫌がるポイントを把握しておくなど、普段からお互いの気持ちに寄り添ったコミュニケーションをとろう。快く意思を伝えられるよう、パートナーと話してみるのもおすすめ。

「性的同意の明確な取り方はありません。ひとりひとりの考え方が違うように、コミュニケーションの取り方も異なるからです。だからこそ、相手の心と気持ちに寄り添ったコミュニケーションはお互いに必要です。

セックスをしたいことを濁したい人もいれば、ダイレクトに言いたい人もいます。お互いしかわからないワードを決めて、『いいよ』とか『今日はあんまり気分じゃないな』といったコミュニケーションを取り合っている人もいるようです。

どんなサインを送っていたとしても、お互いにきちんとその意味をわかりあうことも大切ですし、普段のやりとりの延長線上に性的同意があると認識して、パートナーとのコミュニケーションを大切にしつつ、相手がされたら嫌なことを知っておくことが大事だと思います」(みたらし加奈さん)

断るときや断られるのが不安なときは?

パートナー間では、「NO=嫌い」ではない、と把握しておくことが大切。

「“好き”と性行為が直結しやすい人がいれば、恋愛感情と性的欲求が直結していない人もいます。普段からわかり合っていくのも大事だと思いますが、断るときに『今日はムリ』と突き放してしまうのではなく、『あなたのことは本当に大好きなんだけど、今日は体調が悪くてしたくないな』などとNOの理由をお互いに伝えられたら、より良いコミュニケーションになっていくかもしれないですよね」(みたらし加奈さん)

3.性暴力に関する法律

close up lawyer businessman working or reading lawbook in office workplace for consultant lawyer concept
Getty Images

どういった場合に犯罪になるのか。性暴力に関する法律や、被害に遭ったときにどうすればいいのか解説。

日本における性行為に関する法律は?

相手の同意がなく無理やり性行為に至った場合、性暴力(レイプ)になり、刑法第177条「強制性交等罪」になりえる。

被害に遭ったときはどうすればいい?

もし被害にあったら110番に通報を。警察の性犯罪被害相談電話窓口につながる 「性犯罪被害相談電話」、全国のワンストップ支援センターにも相談できる。

可能であればそのときに着ていた洋服を捨てずに、体も洗い流さずにワンストップ支援センターに行こう。犯人のDNAが付着している可能性があり、有力な証拠になり得るのだ。

思い出すのが苦しいかもしれないが、そのときに起きたことを時間や場所とともにメモに残しておこう。スマホでメモしておくとそのときの時間もわかる。友人や家族など、知り合いに連絡しておくことも有効だ。

「とにかく自分の身をいちばんに守ることが大切ですが、暴力や脅迫で抵抗できなかったときには、着ていた服をとっておいてほしいです。

また、相手の体液などは早く洗い流したい気持ちに駆られてしまうかもしれません。できればそのままの状態で警察やワンストップセンターへ行ってください。もし洗い流してしまったとしても、できるだけ早めに警察や支援センターに行ってみてください。

あらかじめ知識を持っておくと、少しだけ冷静に判断できるかもしれません。たとえ断れない状況だったり、お酒を飲みすぎてしまったりと、あなたが『自分に非があるのかもしれない』と思ってしまったとしても、同意していない性行為は性暴力なので、それは忘れないでいてほしいです」(みたらし加奈さん)

性的同意年齢は?

日本の刑法上の性的同意年齢は13歳。これは、性行為をしたいのかどうか、判断できる能力があるとみなされる下限の年齢のことで、性行為がどのような行為なのか理解しているとされている。

しかし、13歳というのは先進諸国のなかでも比較的低く、この同意年齢は明治時代に制定されてから110年以上改正されていない。13歳以上であれば法律上大人と同様に扱われ、性的暴行があったときに「どうやって脅迫されたのか」「どのように抵抗したのか」を説明しなければならないのだ。

「13歳の子が大人から性暴力被害に遭ったとしたら、そこに明確な脅迫や暴力がないと性的同意があったと見なされてしまいます。日本の法律自体が世界各国と比べても性暴力被害者に高い立証責任を追及させられているところがあるのでは、と思います」(みたらし加奈さん)

世界の性暴力に関する法律と性的同意年齢

women in a metoo march
Getty Images

時代に合わせて、ヨーロッパを中心に性暴力に関する法改正が広がっている。

スウェーデンでは2018年に法改正が行われた。それまでは現状の日本と同様、罪を問うには「同意があったのか」「暴行・脅迫があったのか」が必要だったが、法改正によって積極的な同意のない性交は違法に。

スウェーデンが特別進んでいるわけではなく、イギリスやアイスランド、ドイツなどでは、すでに同意がなければ性暴力として処罰される法律が導入されている。

また、各国の性的同意年齢は下記の通り。

  • 18歳:カルフォルニア州刑法(アメリカ)
  • 17歳:ニューヨーク州刑法(アメリカ)
  • 16歳:イギリス、カナダ、韓国、フィリピン
  • 15歳:フランス、スウェーデン
  • 14歳:オーストリア、ドイツ

ソース:ヒューマンライツ・ナウ「性犯罪に対する処罰 比較」

日本でも2017年に法改正が行われたが、性的同意年齢は変わらなかった。法改正や性的同意年齢の見直しは今なお議論が続いている。

「性教育が普及している国は、初めて性行為をする年齢が高い傾向にあります。そのくらい性行為というのは、とくに生物学上で女性の場合は、膣内に挿入する行為にリスクが伴うことを理解しているんだと思います。膣は内臓だから、自分の大事な臓器に相手を招き入れる行為でもあります。

性別やセクシュアリティに関係なく、性行為自体は体に負担があるからこそ、相手のことも大切にしなきゃいけないし、自分のことも大切にしなきゃいけない。日本でも同意をとってお互いの心地のいい関係性でやらなきゃいけないんだよという考えが広まってほしいし、どう伝えていくかが課題です」(みたらし加奈さん)

4.性的同意の大切さを広げるために

young couple reading newspaper on bed
Getty Images

スウェーデンが法改正に至った背景には、同意のない性交はレイプとみなすように求めて声を上げ続けた人たちがいる。「団結して声をあげること」が法改正につなげる大きな力になったとも言えるだろう。

日本では、以前に比べてインターネットの動画やSNSで情報やコミュニティにアクセスしやすくなったが、セックスや性被害を連想する話題をまだまだオープンに語る機会があまり多くない。性的同意を広げるために、私たちが意識しておきたいことを教えてもらった。

「日本では女性の13人に1人が、男性の67人に1人が無理やりに性行為されたことがあると回答している調査があります。そういった現状を踏まえてまずは『NO means NO』(NOは同意ではない)をしっかりと広めていかないと、と考えています。もちろん『YES means YES』(同意があるときだけ性行為する)と同じような意味合いを持つのですが、日本の現状だと『NO means NO』が先。

見知らぬ人から受けてしまう性暴力だけでなく、パートナー間の望まない性行為も性被害になります。『NO means NO』を広めていかないとそういった被害も減りません。性暴力を撲滅していくために、性的同意の概念を広めていくことも重要だと考えています」(みたらし加奈さん)

性的同意について話し合おう

パートナーとのコミュニケーション方法について尋ねたり、パートナー間であっても望まなければNOと言ってもいいことを少しずつ広げていきたい。

「例えば友人との会話で、『今日パートナーとセックスしたんだけど、あまり気が乗らなかったんだよね』とプライベートな経験の話をシェアしてもらったとします。そういう話があったときに『それって本当は嫌だったんじゃないの?』とか『もし嫌なことがあったら聞くからね』と伝えたり、mimosasのような性的同意について発信しているメディアやニュースを紹介してみたり、友人同士の会話で少しでも性的同意に触れてみることも大切ですよね(みたらし加奈さん)

大切な人が性被害に遭ったら?

人は、大きなストレスがかかったときに怒りや悲しみの感情が出せないと、笑ったり「大丈夫です」と言ったりして自分を立て直そうとしてしまうことがある。また、その人の顔の動きや雰囲気が本心と直結しないこともあるそう。

「私の友人でも、痴漢の被害に遭ったときにシリアスなムードで相談してきた人は少なく、ほとんどが嫌な経験を笑いのネタのように話していました。臨床心理学では、そういった反応をマニクディフェンス(躁的防衛)と呼ぶこともあります。人は大きなストレスがかかったとき、自分の感情を正常に処理することが難しくなるので、本心に反して笑ってしまう状況もあるのです。

表情だけ読んで完結させるだけでなく、『あなたは笑っているけど、もしもしんどいことがあったら私に言ってね』と伝えてあげるなど、一歩踏み込んだ深いコミュニケーションが大事です」(みたらし加奈さん)

紅茶に置き換えて説明する動画

同意とは何か、子どもでもわかるようにイギリスの警察が制作した動画を参考にしてみよう。性行為を紅茶に置き換えてわかりやすく説明している。

こういった動画を観たり、友人やパートナーにシェアしたりするのも理解を深める助けになるだろう。

「mimosas」について

今回解説してくれたみたらし加奈さんが理事を務める「mimosas(ミモザ)」とは、性被害について正しい情報を発信するメディア運営を行う団体。性的合意の文化形成を目的に、性被害に遭ったときの心のケア方法や、トラブルを防ぐ知識をわかりやすく発信。

ウェブサイト:https://mimosas.jp/

Instagram:https://instagram.com/mimosas_jp

Twitter:https://twitter.com/mimosas_jp

note:https://note.com/mimosas_jp

text:NANA SUZUKI

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みたらし加奈
臨床心理士/NPO法人mimosas代表副理事
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大学院卒業後、総合病院の精神科にて勤務。現在は国際心理支援協会に在籍。SNSを通して、精神疾患についての認知を広める活動を行っている。性暴力や性的同意に関する専門的な知識を発信するNPO法人「mimosas(ミモザ)」副代表理事。著書に『マインドトーク―あなたと私の心の話』、12月には『テイラー -声をさがす物語』(ハガツサブックス)も発売。

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