※本記事は2023年3月29日にWomen's Healthで掲載されました。
「生理になる前のほうがお腹がつらいし、イライラする」という人も多いのでは? それは、生理の前兆として心や体が不調になる月経前症候群 、PMS。今回は、そんなつらいPMSのケア方法について、産婦人科医の高尾美穂先生にお話を伺った。
(「」内、高尾美穂先生)
PMSとは?
生理の前兆として心や体が不調になり、生理が始まるとなくなる、もしくは改善する「月経前症候群」。なんと全世界の妊娠可能な女性の75%がPMSを経験しているという。女性の4人中3人がPMSに苦しんでいるということになる。
代表的なPMSの症状
「ホルモンの変化により発生するPMSは、生理前に周期性を持って現れては消える、精神的・身体的症状の複合体といえます。理由もなく涙が出たり、短気になったりと、感情の起伏が激しく、コントロールも難しくなることも。また憂うつ、睡眠障害、食欲の変化が生じることもあります。学業や仕事においては集中力が低下し、物忘れがひどくなることも。身体的には腹部膨満感、乳房痛がよくみられ、頭痛や便秘、肌のトラブルを訴える人も多くいます。むくみによる体重の変化が伴うこともあり、理由もなくだるさや疲れを感じることもあります」
身体的症状:乳房の痛みや張り、腹部膨満感、頭痛、筋肉痛、便秘や肌荒れなど精神的症状:憂うつ、不安、イライラ、集中力低下など
症状は4~10日ほど続き、日常生活ができなくなるほど苦しい場合もあります。
PMSの症状を緩和させるためにできること
- 自分の体のことを知る
- 日常生活で最も重要なのは睡眠時間を7時間以上は確保すること
- ストレスをなるべく減らし、規則的に運動する
- ひどく不安を感じたり、神経過敏になったりする時は、アルコールやカフェインは避ける
「PMSを当たり前だと思っている女性も多いですが、ただ我慢するよりは、自分の体のことを知ろうとする姿勢が大事。生理前の不調を改善する最良の方法は専門医に相談すること。受診の時は自分の症状を記録して、事前に把握しておくといいでしょう。そうすることで原因をより正確に分析して、診断ができるからです。そして、感情と気分をコントロールするのに役立つセロトニンの材料になるタンパク質やカルシウム、マグネシウムが含まれた食べものを摂取し、十分な休息を取ることも大事です」
PMSを緩和させる栄養素
PMSの原因のひとつはホルモンの変化ですが、体に必要な栄養素(マグネシウムやビタミンE、カルシウム)の不足で症状がひどくなることも。
ビタミンB群
「エストロゲンの代謝を促進させ、ホルモンバランスを取り戻す働きをします。別名『幸せホルモン』とも呼ばれるセロトニンを合成するために必要なビタミンB6(ピリドキシン)が含まれたものを選びましょう」
ビタミンE
「からだのむくみを引かせ、不安や憂うつをやわらげる働きをします。ナッツ類や魚介類などいろいろな食品に含まれています」
カルシウム
「一般的によく知られている骨を丈夫にする働きのほか、疲労による憂うつ、焦りなどに効果があります。食品としてはチーズ、ちりめんじゃこ、牛乳などを摂取してください」
「こうした栄養素は内分泌代謝にある程度影響を与えますが、全てのPMS症状を大きく緩和させることはありません。そのため、サプリメントなどに頼るよりも、バランスのよい食事をはじめとした、また基本的な健康管理が最も重要です」
PMS を緩和させる薬
「PMSの治療法には、 低用量ピルや漢方薬がよく使われます。 また、 メンタルを安定させる目的で使う漢方や、むくみ緩和の目的で使われる漢方などもあるので、症状に合わせて選びましょう」
最後に、PMSはパートナーなど周りの人にわかってもらうことも大切。調子が悪い時期を伝えておけば、相手にも理解してもらえて、トラブルも減るはず。ちゃんと対策をして、生理前の時期をもっと楽にしていこう!