※本記事は2022年3月3日にCosmopolitanで掲載されました。
「子宮外妊娠」という言葉自体は耳にしたことがあるけれど、「詳しくはわからない」「どんな症状なのか知らない」という人も多いはず。
この記事では、子宮以外の場所に受精卵が着床してしまう「子宮外妊娠」について、原因や症状などの基礎知識や治療法、 産婦人科医の海老根真由美先生にお伺いしてきました。
以下、監修:海老根先生
子宮外妊娠とは
「子宮外妊娠(異所性妊娠)」とは文字どおり、本来着床すべき子宮腔以外の場所に着床して妊娠すること。子宮外妊娠の多くは卵管で発生しますが、卵巣や腹腔内、または子宮頸部であっても着床することによって発生するケースも。
子宮外妊娠が起こる場所として最も多いのは卵管で、全体の98%以上を占めると言われています。精子と卵子は卵管膨大部で受精して、受精卵となります。その受精卵が子宮へと向かう途中の卵管で着床してしまうというのが最も多いケースです。
他には、子宮の出口に近い頸部までいって着床してしまう場合や、卵管を飛び出して、卵巣内や腹膜などに根を下ろしてしまうということもあります。
子宮外妊娠の原因
卵管妊娠の原因は、何らかの理由で卵管が狭くなったり癒着したりしていることが挙げられます。特に、クラミジア・淋菌感染症などの性感染症に感染すると炎症が生じ、卵管閉塞や卵管癒着が起こることによって受精卵が通りにくい状態に。
また、腸などの外科手術や人工妊娠中絶、帝王切開などの手術をした傷跡が残っている場合、そこに受精卵が着床するケースも。
ただ、子宮外妊娠はこれら以外にも様々な要因で引き起こされると考えられています。そのため予防策を挙げるとすれば、性病検査を定期的に受けることと異変を感じたらすぐに医療機関を受診することでしょうか。
性感染症に感染したとしても、初期段階で治療をすることで卵管への影響を最小限に抑えることができます。もし気になる症状があるなら「気のせい」と思わずに、婦人科を受診してみてください。
子宮外妊娠の危険性
残念ながら子宮外妊娠をしている場合は通常、妊娠継続が期待できません。
たとえば、卵管妊娠の場合、妊娠が進み受精卵が大きくなるとやがて卵管が破裂、大量出血によってショック状態となり、妊婦が亡くなってしまうことも。卵管破裂を引き起こす子宮外妊娠は、妊娠に関連した死亡事例の約1割を占めています。
子宮外妊娠は予防が難しい疾患。卵管の破裂は妊娠5〜7週の時期に起こることが多いため、何よりも早期発見が重要です。
子宮外妊娠の症状
- 継続的な下腹部痛や出血
- 妊娠の初期症状
- 月経の遅れ
子宮外妊娠の場合、下腹部に強烈な痛みが継続的に生じたり出血したりすることがありますが、卵管破裂の痛みを生理痛と思い込んだり出血を生理の経血だと自己判断してしまったりして、大量出血してから緊急搬送されてくるケースも多くあります。
また、子宮外妊娠をしたことで生理が止まっているのに、単なる生理不順だと思い込み、発見が遅れることも。
普段から生理不順を起こしがちな人や、不正出血があっても病院に相談に行かない人は、子宮外妊娠を見過ごしてしまう可能性があります。少しでも違和感を覚えたら、自分で判断せずに婦人科や医療機関に一度足を運んでみてください。
子宮外妊娠の検査方法
まず妊娠の兆候がある場合には、超音波検査で子宮内に胎嚢(子宮内に胎児を包む袋)があるかを確認します。
一般的には生理が遅れてから1~2週間ほどで、赤ちゃんの心拍を確認することができると言われています。この段階で胎嚢が見え心拍も確認されれば、正常な妊娠として判定。
しかし、妊娠検査薬などで妊娠反応が確認されているにもかかわらず、胎嚢が確認できない場合、子宮外妊娠の疑いが。ただ、妊娠週数が早すぎる場合(妊娠2〜3週ほど)は、胎嚢があっても超音波検査で確認できないことも。このような場合は、1週間ほど空けて後日改めて超音波検査を行うケースが多いです。
胎嚢が確認できない場合は、血液検査などで妊娠ホルモンの値を調べ、受精卵が子宮以外のどこに根を下ろしているのかを探します。
子宮外妊娠の治療法
子宮外妊娠と診断された場合、治療方法は妊娠週数や胎児の大きさ、本人の今後の妊娠に関する意思などを慎重に検討したうえで判断されます。
主な治療方法には、腹部をメスで切開して手術を行う開腹手術、内視鏡で手術を行う腹腔鏡手術などがあります。
現在では妊娠反応や超音波検査などの診断方法が進歩したこともあり、子宮外妊娠を早期に発見できることが増えてきています。
子宮外妊娠後の妊娠は
過去に子宮外妊娠で手術をしたことがあっても、後に自然妊娠をして出産される方もいらっしゃいます。
ただ、再び子宮外妊娠になる確率も10%ほどあるといわれているので注意してください。クラミジア感染症や子宮内膜症などによる卵管癒着が子宮外妊娠の原因だった人は、2つある卵管のもう一方も同じ状態なことが多いからです。
自然妊娠が難しかったり再発の恐れがあったりする場合には、体外受精という選択肢があります。
予防策がない子宮外妊娠は、できるだけ早い段階で発見することが大切です。「妊娠したかも」と思ったらすぐに産婦人科を受診し、正常な妊娠かどうかを確認する必要があります。
生理開始予定日から1~2週間経っても生理が来なければ、妊娠の可能性を考えて産婦人科を受診してみてください。
お話を伺ったのは…
産婦人科医 海老根真由美先生
Tel.03-5789-2590