かつての社会においては、男女はそれぞれに定められた規範を守ることが期待されてきました。たとえば「男性はパンツ」を履き、「女性はワンピース」を着る。「男の子はブルーの服」を着て、「女の子はピンクの服」を着る、など。
ところが時代は少しずつ移り変わり、現在ではこうした性に対するステレオタイプに従う必要性を感じない人も増えています。こういったアイデンティティは、欧米では「ジェンダー・ノンコンフォーミング」と呼ばれるんだそう。
本記事では、「ジェンダー・ノンコンフォーミング」について、専門家の解説を交えてお届けします。
ジェンダー・ノンコンフォーミングとは
「生まれた時の性別によって、社会で期待されるジェンダーの“かたち”があり、実に多くの人々が、人生を通してそれぞれのやり方でその“かたち”に従い(=コンフォーム)、それを演じているのです」と語るのは、ニューヨーク州立大学オールバニー校のジェンダー・アンド・セクシュアリティ・リソース・センターで、アシスタント・ディレクターを務めるコートニー・ディアレイドさん。
ディアレイドさんによると、ジェンダー・ノンコンフォーミングとは、「本質的には、世間で受容されているジェンダーの規範に異議を唱える人、あるいは、覆そうとする人や物すべて」を指す包括的な概念なのだとか。
これは非常に幅広い概念で、「外側から見ただけではわからないそれぞれの生き方や、衣服やヘアスタイルなどを通じて、どんなジェンダーを演じるかにも関わってくる」とのこと。
ジェンダーにまつわる他の概念との違い
ノンバイナリーとの違い
ノンバイナリーの人々が「男と女」という二元的なジェンダー構造を拒むのに対し、ジェンダー・ノンコンフォーミングの人々は、「より自分自身のジェンダーについて認識を持っている人が多い」とディアレイドさんは話します。
そのうえで、ジェンダー・ノンコンフォーミングの人々は「ジェンダーのステレオタイプや規範に異議を唱え、覆そうとする」のだとか。
アジェンダーとの違い
一方、ジェンダー・ノンコンフォーミングと似た分類にあたるのが、アジェンダーの人々。ただし、アジェンダーの人々が「自分にはジェンダーがない(無性別)」と捉えているのに対し、ジェンダー・ノンコンフォーミングの人々は「通常、自分にジェンダーがないとは言わない」とディアレイドさんは解説。
代わりに、彼らは“自分たちが生きている社会が規定するジェンダー”に、何らかのかたちで従わない姿勢を取るのだとか。
ジェンダークィアとの違い
ジェンダークィアは、ジェンダー・ノンコンフォーミングと近似の概念。ディアレイドさんによると、2つの概念はしばしば置き換え可能と見なされているそう。
「ジェンダークィアの人々は、ジェンダーは流動すると唱えており、振り返ってみると、その概念の大部分が“(規範に)従わない”という姿勢を意味しているのです」
ジェンダー・ノンコンフォーミングの特徴
ディアレイドさんによれば、ジェンダー・ノンコンフォーミングを自認する人々に外見的な特徴は特にないそう。
また、「アメリカが今、ジェンダーの役割についてきわめて重要な再構築の最中にある」ということがジェンダー・ノンコンフォーミングの人々の存在にも大きく関わってくるのだそう。
「現時点でジェンダー・ノンコンフォーミングを自分のアイデンティティに定めるなら、まだそれを知らない人々が尋ねてくるであろう、より大きな概念についての語り部になるのだと捉えてください。彼らはあなたが着ているものや、やっていることに対して色々と尋ねてくるでしょう。あなたの言動は彼らにとって、そもそものジェンダー規範に反していると映るからです。人々は、他者に対してあれこれ憶測するのをやめるべきです」
当事者をサポートするには?
家族や友人、恋人がジェンダー・ノンコンフォーミングであることを自認している場合、どのように支えることができるのでしょうか。
ディアレイドさん勧める方法は、以下の通り。
- 相手を既存の枠組みに押し込まない
- 自分のジェンダー規範を見つめ直し続ける
- 子育てをする際は、ジェンダー規範に従うことを拒む
- 世間の「こうあるべき」に当てはまらない人を肯定する
※この翻訳は、抄訳です。
Translation:mayuko akimoto