※本記事は2023年6月24日にWomen's Healthで掲載されました。
不眠、体重の増加、ホットフラッシュは人生でホルモンがもっとも大きく変動する時期、つまり更年期の主な症状。一般的に12カ月連続で生理が来なければ閉経と言われるけれど、この閉経の前後5年を含めた更年期には、不快な症状が次々と現れて好きなことができなくなることもある。でも、閉経に伴うエストロゲンの減少と、それに対する体の反応を理解していれば、更年期の症状を緩和する方法も見つけやすい。
実際ホルモン変動は、脳の体温調節中枢だけでなく、腸と膣に住む細菌にも影響を及ぼす。細菌叢、あるいはフローラとして知られる細菌の集合体は、腸や膣、皮膚を含む体中に存在している。
フローラのなかでは善玉菌と悪玉菌が共存しており、その2つのバランスが脳や心臓といった全身体機能の健康を支えている。女性のホルモン調節とエイジングを専門とする認定自然療法医で、アカシャ総合医療センター女性クリニック共同ディレクターのマギー・ネイ医師も「ホルモン調節と腸の健康状態は免疫系、脳の健康、気分、睡眠、皮膚、代謝に影響を与えるので、年を取るほど重要です」と説明する。アメリカ版ウィメンズヘルスから詳しく見ていこう。
閉経が腸の健康に与える影響
腸内フローラのなかには無数の菌がいて、それが私たちの健康に不可欠であることは先述の通り。でも、閉経が近づくと女性の腸内フローラの多様性が低くなり、これが病気のリスクを上昇させることが最近の研究で判明した。
腸と同様、膣にも善玉菌と悪玉菌を含むフローラがあり、健康な膣にはラクトバチルス・ガセリ、ラクトバチルス・イナース、ラクトバチルス・ジェンセニイといったラクトバチルス（乳酸菌）種の菌が住んでいる。でも、善玉菌と悪玉菌の割合は閉経前後で入れ替わってしまうそう。善玉菌と悪玉菌のバランスが崩れると、膣感染症や性感染症の発症率が高くなる。
「ご存じの通り、閉経の前後ではエストロゲンの量が減ります」と語るのは、米アリゾナ州フェニックスで女性の健康研究プログラムディレクターを務めるメリッサ・ヘルプスト＝クラロヴェッツ博士。
「これがグリコーゲンの量に悪影響を及ぼす可能性もありますね。グリコーゲンは善玉菌のエサですので、これが減るのは好ましくありません。
また、腸内細菌がエストロゲンの量に影響し、それが膣内細菌の量や、腸と膣を覆う上皮の厚さを変えてしまうこともあります。上皮細胞は、体内に侵入した病原体に真っ先に対応するファーストレスポンダーです」
だからこそ更年期では、プロバイオティクスのサプリメントが役に立つ。
プロバイオティクスの実体と作用
「プロバイオティクスは膣の健康を支える生きた善玉菌。体内のスペースを占領することで害虫や病原体を締め出して、抗菌成分を産生し、免疫活動を活発にします」とヘルプスト＝クラロヴェッツ博士。「プロバイオティクスには上皮細胞のバリアを強化する働きもあります」
プロバイオティクスの摂取ひとつで閉経や更年期に伴う症状が治まることはないけれど、症状が緩和する可能性はある。というのも、プロバイオティクスには閉経期の腸と膣の健康状態を改善する力があるから。
「腸内のプロバイオティクスは細菌の多様性を促進します」とヘルプスト＝クラロヴェッツ博士は続ける。「エストロゲンのバランスを取り戻し、腸と膣の両方にいい影響を与えてくれる可能性がありますから、プロバイオティクスのサプリメントを飲めば腸の健康状態が改善し、それが膣の健康にもつながるでしょう」
自分に合ったプロバイオティクスの見つけ方
プロバイオティクスは多種多様の菌株から成っており、それぞれが異なる形で体に作用する。ネイ医師いわく自分に適したプロバイオティクスのサプリメントを選ぶためには、いま現れている辛い症状に目を向けて、それに効く菌株を特定することが必要。
一例としてブレインフォグには、不安を軽減しながら記憶と認知を向上させる可能性が予備研究で証明されたラクトバチルス・プランタルムを含むサプリメントがいいかもしれない。また、腸内フローラの多様性が低い上にラクトバチルス・プランタルムの数が少ないと、体重の維持が困難になることも分かっている。
「自分の心に自分の目標を聞いてみましょう」とネイ医師。「その答えが『眠れるようになりたい』なら不眠に効くサプリメントを探して、かかりつけ医にも相談しましょう」。
病院では、複数の菌株で複数の症状にアプローチするサプリメントが勧められるかもしれない。プロバイオティクスのサプリメントを買うときは、商品のパッケージやラベルに書かれた“CFU”を必ずチェック。
CFUはコロニー・フォーミング・ユニット（コロニー形成単位）の略で、その商品に含まれる生きた菌の数を示している。CFUは高ければ高いほどよい。
「CFUが10億単位の商品を選びましょう」とヘルプスト＝クラロヴェッツ博士。「その効果が臨床的に証明された菌株を選ぶことも重要です」成分を分析するのも忘れずに。
「その商品に含まれる非活性成分をチェックしましょう」とネイ医師。例えば、プロバイオティクスのサプリメントに「染料や増量剤は必要ありません」これを機に、あなたも自分に合ったサプリメントを探して、閉経前後および更年期という人生の新しいステージを前向きな気持ちと健康な体で始めよう。
※この記事は、アメリカ版ウィメンズヘルスから翻訳されました。
Text: Lisa Mulcahy Translation: Ai Igamoto
