※本記事は2023年9月24日にCosmopolitanで掲載されました。
「セックス」や「ジェンダー」「セクシュアリティー」「性表現」という言葉。 それぞれ「性」に関連するものですが、ひとつひとつまったく異なる意味をもっています。
そして人の見た目や自己表現によって、性別を判断しないという基本が知られるようになるにつれて、これらの言葉がもつ概念は、おそらくこれまで以上に大事な意味をもつかもしれません。
細かなニュアンスの違いを理解することが、他者への尊重にもつながるはず。<コスモポリタン アメリカ版>から、ジェンダーを巡る単語の基本を解説します。
「セックス」とは?
セックスは、単に「身体的な行為」だけを意味する言葉ではありません。性別を意味するセックスを、「出生時に割り当てられた性」と表現する人もいます。
たとえば、染色体がXX(一般的に女性がもつとされる性染色体)であっても、出生時にペニスがあると見なされれば出生証明書には男性と記載されるように、XY染色体(男性がもつとされる性染色体)をもっていても、膣があると見なされれば女性と記載される場合が多いのだとか。
セックスセラピストのケリー・ワイズ博士は、ほかにもインターセックス(染色体のパターンなどにより、男性でも女性でもある)の人々もいると指摘。
遺伝的にはX染色体とY染色体を1本ずつもつものの、アンドロゲンと呼ばれる特定の男性ホルモンが作用しないという場合なども、インターセックスの事例のひとつとしてあげられます。
セックスとジェンダーの違い
出生証明書に記載されている性別は、必ずしも性自認(自分の性別についての認識や感覚)や性表現と一致するわけではありません。大事なのは、ジェンダーは「社会的な概念」であるということ。
生まれた時に割り当てられた性別と、自分が認識している性別が一致している人は「シスジェンダー」と呼ばれます。一方で、生まれた時に割り当てられた性別と性自認が一致していない人々は「トランスジェンダー」と呼ばれます。
性自認には自身を男性/女性といった定義に当てはめようとしない「ノンバイナリー」、あるいは性自認が変化するものだと捉えてあえて定義しない「ジェンダーフルイド」が使われることも。
大切なのは、ジェンダーの捉え方は無数にあり、そこには正しい方法も間違った方法もないということ。決まった道を進めば自分のジェンダーがわかるというわけではなく、辿る道も人によってさまざまなのです。
自身もトランスジェンダーであるワイズ博士は、自分についてわからないことがあっても、焦らなくてよいとよびかけます。
「自分の性自認に迷いがあっても、慌てて自分に何かしらのレッテルをはる必要はありません。時間をかけてもいいし、ゆっくりと線引きを変えていってもいいのです」
「一人の人間として生きる時間はたっぷりとあります。ジェンダーは人間の要素の一部でしかなく、すべてを定義するものではありません。答えを急ぐ必要はありませんし、自分を枠にはめる必要もないんです」
セクシュアリティは「誰を好きになるか」
まずは、ジェンダーと「セクシュアリティ(性的指向)」の違いを理解することが重要。
ジェンダーが個人の表現と紐づく社会的な要素の一方で、セクシュアリティは「どのような性別の人を好きになるか」で定義されるもの。セクシュアリティはジェンダーを決めるものではなく、反対に、ジェンダーがセクシュアリティを決めるものでもありません。
セクシュアリティには、例として以下のものなどがあります。
- レズビアン(恋愛対象が女性という女性たち・あるいは非男性)
- ゲイ(恋愛対象が男性という男性たち・あるいは非女性)
- バイセクシャル(両性愛者)
- パンセクシャル(全性愛者)
- アセクシャル(他者に対して性的欲求を抱かない性的指向)
これらは、シスジェンダーやトランスジェンダー、ノンバイナリーといった性自認とは無関係。セクシュアリティは、好きになる性で決まるものです。
「見た目」とセクシュアリティは別物!
性表現――つまりそれは、相手の見た目や言動で表される性のこと。
世間には、性別によってどう行動すべきか・どのような見た目であるべきかを形づくるジェンダー規範や、一方的な“男らしさ”や“女らしさ”の価値観を前提にしたイメージがあります。たとえば「ワンピースは女性のもの」「(正装で)スーツを着るのは男性」といった規範もその一例。
つまり、誰かの性表現や、自己表現(服装や趣味といった要素のすべて)を見た人が、固定観念によってその人の性自認が予想してしまう可能性があるということ。ですが実際は、本人の性自認は異なっているというケースもあるというわけです。
そのため、どのような“見た目”かで、他人が誰かの性表現や性自認を決めることはできないといえるでしょう。相手がより“男性的”、“女性的”、あるいは“中性的”な見た目であったり、複数を兼ね備えていたりしても、その人の性表現とセクシュアリティが結びついているわけでもありません。
だからこそ、「あなたのジェンダー代名詞(he/she/theyなど)は何ですか」と聞いてみることが大切になります。
自分の“物差し”を広げてみる
当事者でなくても、支援者として寄り添うことは誰にだってできます。
自分で学習することも方法のひとつ。ジェンダーにまつわる概念について学び、それについてのあなたの認識やグループ同士、世間の認識を意識することが重要です。より包括的な考えを身に付けるには、オンラインやソーシャルメディアの豊富な情報も役立つはず。
ほかには、(必要のない場面で)性別を限定する言葉を使わないこと。代わりに「みんな」や「人々」といった表現に置き換えられます。職場では特に気をつける必要があるでしょう。
そしてなにより、自分の物差しで人々を決めつけないことが、一番大切なこと。自ら学び、相手に尋ね、必要な方法でサポートするだけでなく、固定観念をもたないことが重要なのです。
※この翻訳は、抄訳です。
Translation: Mari Watanabe(Office Miyazaki Inc.)
COSMOPOLITAN US